保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

迷走する英国のEU離脱問題について(1) ~移ろい行く民意を追いかけても無駄だ~

欧州連合(EU)離脱が来年3月末に迫っているというのに、英国が混迷の淵から抜け出せずにいる。離脱方法を定めたEUとの合意を英議会は承認できず、そのめどすら立たないのである。

 このままでは何らの合意もなしに離脱の日を迎えかねない。そうなればEUとの間で関税や通関手続きがいきなり復活する。英国やEUはもちろん、日本を含む世界経済は大きな混乱に陥ろう。

 いつまで決断を遅らせるつもりなのか。賛否の議論は出尽くしているはずだ。国際社会の信頼を失墜させないためにも、英議会は無秩序な離脱の回避を最優先とし議論に終止符を打つべきである》(12月17日付産經新聞主張)

 議会制民主主義の生みの親たる英国が機能不全に陥っている。一昔前、日本は「決められない政治」に苦しんだが、同じことが本家本元の英国でも起こっている。もはや「決められない」ことは議会制民主主義に付き物の「病」と言うべきなのかもしれない。

 民主主義が最終的には多数決で物事を決めようというものである限り、今更EU離脱か残留かの議論を蒸し返しても仕方ない。そんなことをしても堂々巡りになるだけだし、それは多数決原理を否定することにもなりかねない。

 朝日社説子は、

《英国の民意は今、どこにあるのか。再度確認する努力が求められているのではないか》(12月17日付朝日新聞社説)

と言う。が、「今」の民意を追い続ければ、いつまで経っても結論は出やしない。

《最近の世論調査では、「残留」が「離脱」を上回っている。国民投票で離脱を選んでから2年あまり、英国民はいまだに何が正しい道か決めあぐねているように見える。

 残留を望むのは、EU創設や通貨ユーロなどを定めた92年調印のマーストリヒト条約後に生まれた若者が多い。EUの拡大とともに育ち、「欧州人」の意識が強い。離脱すれば、その後を長く生きる世代でもある。

 逆に高齢層には、大英帝国時代を懐かしむように「EU属国からの脱却」や「主権回復」を求める傾向が目立つという》(同)

 若い世代もいずれ歳を取る。歳を取れば今の高齢者たちのように大英帝国への思い入れが強くなることだって有り得る。だから、これからの時代を生きる若い世代の今の意見を尊重すべきだということには必ずしもならない。

《2年前の国民投票で示された民意は重い。だが当時誇張された「明るい未来」が実像ではなかった以上、立ち止まることは党派を超えて国民も受け入れるのではないか》(同)

 つまり、「残留」に舵を切り替えるべきだと暗に言いたいのであろうが、それはそれで問題をただ振り出しに戻すだけではないか。【続】