保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

元日社説読み比べ(4) ~「平和呆け」の読売社説~

《日本は今、長い歴史の中でみれば、まれにみる平和と繁栄を享受している。

 世界に大きな戦争の兆しはない。安倍首相の長期政権下で政治は安定している。諸外国が苦しむ政治、社会の深刻な分断やポピュリズムの蔓延(まんえん)もみられない。

 経済成長率は実質1%前後と低いが、景気は緩やかに拡大している。失業率は2%台で主要国の最低水準だ。治安は良い。健康、医療、衛生面の施策も整う。男女を合わせた国民の平均寿命は84歳と世界トップレベルにある。

 新たな時代へと始動するにあたり、起点とすべきは、多くの国々がうらやむ日本の総合的、相対的な「豊かさ」を正当に評価し、これまでの発展と政治や社会の対応力に自信を持つことである》(読売新聞)

 こういうのを「平和呆け」と言うのである。GHQのWar Guilt Information Program(戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画)によって植え付けられた「自虐史観」に基づく<平和>。

《ここに、CI&E(民間情報教育局)からG-2(CIS・Civil Intelligence Section・参謀第2部民間諜報局)に宛てて発せられた、1通の文書がある。文書の表題は、「ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム」、日付は昭和23年(1948)2月6日、同年2月11日から市谷法廷で開始されたキーナン首席検事の最終論告に先立つこと僅かに5日である。この文書は、冒頭でこう述べている。

〈1、CIS局長と、CI&E局長、およびその代理者間の最近の会談にもとづき、民間情報教育局は、ここに同局が、日本人の心に国家の罪とその淵源に関する自覚を植えつける目的で、開始しかつこれまでに影響を及ぼして来た民間情報活動の概要を提出するものである。

文書の末尾には勧告が添付されているが、この勧告は、同局が、「ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム」の続行に当り、かつまたこの「プログラム」を、広島・長崎への原爆投下に対する日本人の態度と、東京裁判中に吹聴されている超国家主義的宣伝への、一連の対抗措置を含むものにまで拡大するに当って、採用されるべき基本的な理念、および一般的または特殊な種々の方法について述べている〉》(江藤淳『閉ざされた言論空間』(文春文庫)、pp. 261-262)

北朝鮮に100人以上の邦人が拉致されているにもかかわらず放置し続ける<平和>。韓国に竹島を実効支配され続けているのに取り返そうとしない<平和>。ロシアに北方領土を不法占拠されたまま手も足も出せない<平和>、等々。日本は本当に平和なのか。平和でないものを見て見ぬ振りをしているだけの<平和>なのではないのか。

 <繁栄>にしても眉唾である。読売社説子は、<経済成長率は実質1%前後と低いが、景気は緩やかに拡大している。失業率は2%台で主要国の最低水準だ>と胸を張る。が、日本の潜在力からすればこれはむしろ失政というべきなのではないか。

 確かに、失業率は低い。が、それは失業率が悪化するのをおそれ、金融を緩和して円安誘導し、自動車や白物家電などの輸出依存型斜陽産業を助けたからである。この政策のためにどれだけ多くの国富が失われたことか。このことは円だけで経済を見ていては分からない。円をドルと相対化して見れば、円安は国富の収縮であり、1ドル=80円から120円に円安となれば、国富は3分の2に縮小してしまうということである。

 さらに、円安になることで、外国の投資家が日本に入り込む隙を作り、日本の資産が買い叩かれてしまう危険が増すことにもなるのである。【続】