保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

風化する太平洋戦争(5) ~日米を彼らをたがいにいがみ合わせろ、と言うレーニン~

《将来の日米戦争という問題をあつかった膨大な文献がある。戦争が準備されつつあること、それが避けられないということ、このことには疑いの余地はない。平和主義者はこの間題を回避し、きまり文句でそれを塗りつぶそうとつとめているが、経済的諸関係と外交の歴史を研究しているすべてのものには、戦争が経済的に成熟しており、政治的に準備されつつあることは、一点の疑いもありえない。この間題をあつかったどの本をとってみても、戦争が成熱したことを見ないわけにはいかない。

地球は分割ずみである。日本は、膨大な面積の植民地を奪取した。日本は5000万人の人口を擁し、しかも経済的には比較的弱い。アメリカは1億1000万人の人口を擁し、日本より何倍も富んでいながら、植民地を1つももっていない。日本は、4億の人口と世界でもっとも豊富な石炭の埋蔵量とをもつ中国を略奪した。こういう獲物をどうして保持していくか? 強大な資本主義が、弱い資本主義が奪いあつめたものをすべてその手から奪取しないであろうと考えるのは、こっけいである。こういう事態のもとで、アメリカ人は平然としていられるであろうか? 強大な資本家と弱い資本家とが隣りあわせていながら、前者が後者から奪取しないと考えることができるであろうか? もしそうだったら奴らになんの値うちがあるだろうか? 

しかし、このような情勢のもとで、われわれは平気でいられるだろうか、そして共産主義者として、「われわれはこれらの国の内部で共産主義を宣伝するであろう」と言うだけですまされるであろうか。これは正しいことではあるが、これがすべてではない。共産主義政策の実践的課題は、この敵意を利用して、彼らをたがいにいがみ合わせることである。そこに、新しい情勢が生まれる。

二つの帝国主義国、日本とアメリカをとってみるなら--両者はたたかおうとのぞんでおり、世界制覇をめざして、略奪する権利をめざして、たたかうであろう。日本は、あらゆる最新の技術的発明と純アジア的拷問とを結びつけた前代未聞の残虐なやり方で朝鮮を略奪しているが、この略奪をつづけるためにたたかうであろう。つい最近われわれは、日本人がなにをやっているかをかたっている朝鮮の一新聞を受けとった。ここにはツァーリズムのあらゆる方式、あらゆる最新の技術的進歩と、純アジア的拷問制度、前代未聞の残虐性との結合がある。

しかし、この朝鮮というおいしいご馳走を、アメリカ人はもぎとろうと考えている。このような戦争における祖国擁護がこのうえもなく大きな犯罪であり、社会主義の裏切りであることは、いうまでもない。他方の国に対抗して一方の国を支持することが共産主義にたいする犯罪であることはいうまでもないが、しかしわれわれ共産主義者は、他方の国に対抗して一方の国を利用しなければならない》(「ロシア共産党(ポ)モスクワ組織の活動分子の会合での演説」:『レーニン全集第31巻』(大月書店)、pp. 449-450)

 日本及び日米関係について語っていることは出鱈目(でたらめ)である。一々反論する気にもなれないが、重要なのは<彼らをたがいにいがみ合わせる><他方の国に対抗して一方の国を利用しなければならない>と言っていることである。そして日米が互いにいがみ合った結果が太平洋戦争だったということである。【続】