保守論客の独り言

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自民党総裁選:産經主張を批判的に読む(3) ~今ある憲法改正論は戦後レジームの維持修復~

《自民が国民政党を自任するなら、そのリーダーは安定した国家観を持つことが求められる。

 皇位継承は国の基本に関わる…126代にわたって、一度の例外もなく男系(父系)継承を貫いてきた日本の皇統の大切さを語り、守る立場を明らかにしなければならない》(9月18日付産經新聞主張)

 なるほど自民党は1955年、立党に当たり、「党の性格 その1」に次のように述べている。

わが党は、国民政党である
わが党は、特定の階級、階層のみの利益を代表し、国内分裂を招く階級政党ではなく、信義と同胞愛に立って、国民全般の利益と幸福のために奉仕し、国民大衆とともに民族の繁栄をもたらそうとする政党である。

 が、立党55年目に出された「平成22年(2010年) 綱領」にはこの言葉は見当たらない。「国民政党」か「階級政党」かの対立は1991年のソ連邦崩壊によって消滅したと言ってよいのではないか。

 ところで<安定した国家観>という表現が私は気になる。<安定した国家観>は、「安定した国家」観とも「安定した、国家観」とも読み取れる。皇位継承問題に話が繋がっていることからして、おそらく前者の意味なのであろう。詰まり、変革に慎重な、保守的な国家観ということを意味しているのだと思われる。

 産經主張子は、自民党は国民政党なのだから皇室の伝統は守らなければならない、すなわち、「女系天皇」を認めてはならないと言いたいのであろう。が、この立論では、立党の際謳(うた)われた「国民政党」という概念は事実上消滅しているのであるから、「女系天皇」を拒否する理由がなくなってしまわないか。

 否、自民党が「国民政党」かどうかなどどうでもよい話である。「女系天皇」が拒否されるのは、皇室の伝統を否定することになるからである。「皇統」は男系であり、女系が紛れ込んでしまってはもはや「皇統」とは呼ばれない。「皇統」を男系としているのは、皇室に俗世間の男性が紛れ込まないようにするためなのである。そのことを分り易い例で言えば、小室圭氏と眞子様が結婚され、ご子息が天皇になるようなことを認めるということである。

憲法改正は自民の党是で、今年6月に国民投票法の改正が実現した。総裁を目指す候補が、改正したい項目や実現のスケジュールを論じ合うのは当然である》(同)

 具体的改正項目ではなく、どうして憲法改正が必要なのか、そのことがまず問われるべきである。そもそも現行憲法国際法違反の「米製憲法」であるから、これを持ち続けるということは、日本は未だ米国の占領下にあるのと同じである。そのことは日本の領土に米軍が駐留していることからも分かる。だからこそ、「戦後体制(regime)からの脱却」が本源的に問われなければならないのである。

 憲法改正には、戦後体制の脱却に繋がるものと、これを修復し継続しようとするものがある。前者であれば、究極的には現行憲法を廃し自主憲法を制定するか、私が主張する「不文憲法」を採用するという手筈となろう。が、今ある憲法改正の話はほとんどが戦後体制の不備を修復しこれを維持継続しようとするものに見える。それでは意味がない。【了】