保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

皇位継承等の有識者会議について(2) ~権威と権力の分離~

《安定的な皇位継承策を議論する有識者会議が始まった。女性・女系天皇旧宮家旧皇族)の皇籍復帰など十項目がテーマとなる。国民の意識や時代の流れを踏まえ、新しい皇室像を探ってほしい》(4月5日付東京新聞社説)

 コミンテルン(共産主義インターナショナル)の残党たちは、今なお天皇制廃止を望んでいるのだろう。だから「伝統的存在たる皇室を変えようなどと考えることは横暴だ」などと言ったところで聞く耳を持つはずもない。

I cannot conceive how any man can have brought himself to that pitch of presumption to consider his country as nothing but carte blanche—upon which he may scribble whatever he pleases. A man full of warm, speculative benevolence may wish his society otherwise constituted than he finds it, but a good patriot and a true politician always considers how he shall make the most of the existing materials of his country. A disposition to preserve and an ability to improve, taken together, would be my standard of a statesman. Everything else is vulgar in the conception, perilous in the execution. – Edmund Burke, Reflections on the Revolution in France

(誰であれ、自分の国を何でも自分の好きなことを書き込める白紙委任状のようなものだと考えるほどの図々しさをどうすれば身に付けられたのか私には想像できません。温かく思索的な善意に満ちた人は、自分の社会が今よりも別の形で構成されることを望むのかもしれませんが、優れた愛国者や真の政治家は、自分の国の既存の材料を如何にして最大限に活用するかを常に考えます。保存する気質と改善する能力を合わせたものが私の政治家の基準です。それ以外のものは、発想が低俗で、実行するには危険です)―エドマンド・バークフランス革命省察

《最大の論点は皇位継承の資格を女性に認めるか、さらに女系天皇へと拡大することの是非であろう。仮に天皇陛下の長女愛子さまが即位するならば、父が天皇だから女性天皇となる。一般男性と結婚し、生まれた男子が天皇になれば、母親の血筋のみ天皇だから「女系の男性天皇」となる》(同、東京社説)

 <女系天皇>を考えるに当たって問題となるのが「権威と権力の分離」である。天皇には文化的権威はあれど政治的権力はない。この権威と権力の分離を明確にしているのが男系継承なのである。もしこの皇統の原則が崩れれば、皇室に権力が潜り込み、権威と権力の境界が不分明になって、皇室が政治利用されかねなくなるのである。

 皇室に権力が紛れ込み、皇室が権力的に振る舞うことによって<権威>は傷付く。皇室の<権威>が傷つき弱まれば、秩序が乱れ社会は動揺を来(きた)す。そうなれば天皇制を廃止したい共産主義者たちにとって好都合なのである。

終戦直後に皇籍を離れた旧宮家を復帰させる案があるが、実は小泉政権当時の有識者会議では「皇籍復帰は困難」と結論づけられていた。

旧宮家天皇陛下との男系の共通先祖は約600年前までさかのぼる。かつ戦後ずっと民間人だった人が突然、皇族になることに国民の理解が得られるだろうか。共同通信が昨年春に実施した世論調査では、皇籍復帰への賛成は28%にとどまっている》(同)

 が、有識者とは名ばかりの<有識者会議>の結論など大した意味はない。歴史的経緯からすれば、GHQによって皇籍を離脱させられた旧宮家を復帰させるのが筋である。現実的には難しいところもあろうが、検討すべき論点ではある。【続】