保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

自民党総裁選:産經主張を批判的に読む(2) ~網羅的的外れ~

《日本は、同盟国の米国や友好国と連携して中国や北朝鮮を抑止していく必要がある。経済関係は密接だが、中国が安全保障上の脅威であることは間違いない。その問題意識に欠ける政治家は首相にふさわしくない。外交努力に加え、防衛力充実や経済安全保障の強化が求められる。拉致被害者救出の強い決意も披露すべきだ。

 候補者は、外交安全保障をめぐるグランドデザインとそれを実現する政策を語るときである》(9月18日付産經新聞主張)

 言うまでもなく、<外交安全保障をめぐるグランドデザイン>を示すのは簡単なことではない、否、不可能と言って良いだろう。<外交>とは相手のあることであり、相手の出方次第で対応の仕方は変わる。詰まり、<グランドデザイン>を示そうにも示せないということだ。必要なのは、「国を守る」という強い信念と柔軟な対応力である。

《脱炭素を進めるのに際して、現実的なエネルギー政策をいかに展開していくかが問われている。新増設を含めて、安全が確認された原発の稼働は欠かせない》(同)

 <脱炭素>も指導者の資質が問われる論点である。<脱炭素>は優れて政治的な問題である。これを努々(ゆめゆめ)科学的などと考えてはならない。二酸化炭素排出による地球温暖化というのは仮説的「気候モデル」に過ぎない。詰まり、<脱炭素>は政治的駆け引きの1つの道具に過ぎないということである。このことを見誤っては国益を損ねる。

 <脱炭素>は「再生可能エネルギー」推進のための原点であるが、例えば「太陽光発電」を普及させることで儲かるのが誰かを考えれば誰が<脱炭素>を言い募っているのかが分かる。因(ちな)みに太陽光パネルの大半が人権蹂躙(じゅうりん)が噂されるシナのウイグルで生産されている。

 <脱炭素>を逆利用した原発再稼働にも私は反対である。何より二酸化炭素を排出しない原子力発電は時宜に適(かな)うとして再稼働を促すようなやり方ではその先がない。核廃棄物処理の問題、廃炉の問題などを解決するためには核技術の高度化が欠かせない。詰まり、原発を稼働すべき主たる理由は核技術の高度化のためであることをはっきりさせておくべきではないかということである。

アベノミクスを経てもなお低成長から抜け出せない日本経済を中長期的にいかに底上げするか》(同)

 <アベノミクス>とは何だったのか、その総括もなくこのようなことを言っても意味がない。<アベノミクス>は3本の矢と言うが、実際機能したのは「金融緩和」だけだった。よくこの「金融緩和」によって様々な指標が好転したと言われるのだが、私は功罪相半ばするものだったと思っている。詳しい議論は稿を改める必要があるが、「金融緩和」で良くなったのは「虚の経済」であり「実体経済」ではない。もっと言えば、円高を基礎とした「痛みを伴う構造改革」から逃げ、円安によって旧構造を温存し、むしろ「新機軸」の芽を潰してしまったのが<アベノミクス>だったのではないかと私は思っている。【続】