保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

LGBT法案を巡って(5) ~逆転高裁判決~

《戸籍上は男性だが性同一性障害で女性として生活する経済産業省の50代職員が、勤務先の庁舎で女性用トイレの利用を制限しないよう国に求めた訴訟の控訴審判決が27日、東京高裁であった。北沢純一裁判長は「十分配慮して決定したトイレの処遇は不合理とはいえない」として、制限の違法性を認めなかった。制限の取り消しと国に132万円の賠償を命じた1審判決を変更、面談時の上司の不適切な発言のみを違法と認め、11万円の支払いを命じた》(産経ニュース 2021/5/27 19:16)

 これでも釈然としないところは残るけれども、<トイレの処遇は不合理とはいえない>とした高裁の判断は真っ当である。が、

判決理由で北沢裁判長は「(経産省は)先進的な取り組みがしやすい民間企業とは事情が異なる」とした上で、「他の職員が持つ性的羞恥心や不安も考慮し、全職員にとって適切な職場環境を構築する責任を負っていた」と指摘した》(同)

ということは、民間企業は同様の事案があれば、<先進的な取り組み>に努めなければならないともとれる。だとすれば、判決は民間企業を売って経産省を守ったとも言えるだろう。

《職員の要望に沿う形で同僚への説明会を開き、職員が勤務するフロアとその上下階にある女性トイレの利用を認めなかったことについて「職員も処遇を納得して受け入れており、制限撤廃を相当とする客観的な事情の変化が生じたとは認められない」と結論づけた。

また控訴審で職員側は、性的指向性自認を本人の許可なく他人に暴露される「アウティング」の被害があったと新たに主張したが、違法性は認定されなかった》(同)

 他者への迷惑は顧みず、自分の主張が通らないことにただ文句を付けているだけとの印象が拭えない。

《男性として経産省に入省し、1998年に性同一性障害の診断を受けた。職場とは2009年から話し合いを重ね、2010年から女性職員として勤務を開始。家庭裁判所の許可を得て戸籍上の名前も変更した。 しかし経産省は女性用トイレの使用について、他の女性職員との間でトラブルが生じる可能性があるとして、勤務しているフロアから2階以上離れている女性トイレを利用するよう制限した。 更に2011年には、性別適合手術を受けて戸籍上の性別を変更をしなければ異動できないと告げられた。人事部と協議をすると、性別変更手続きをしないのであれば異動先で自身が戸籍上は男性であるとの説明会を開くか、説明会を開かない場合は女性用トイレの使用は認めないことを条件とされた》(HUFFPOST 5/27() 16:20配信)

超党派による今回の法案は、多様性を尊重する社会をつくるための第一歩に過ぎない。性的少数者への差別を根絶するには、さらなる取り組みが欠かせない》(5月27日付毎日新聞社説)

 が、多様化されれば価値は相対化される。既存の価値は傷付き、社会秩序は揺らぐ。虚無が個人の精神を蝕(むしば)んでいく。つまり、守るべきものを忘れた安易な多様化は危ういということだ。

 <根絶>という言葉も引っ掛かる。<性的少数者への差別を根絶する>といった独善は、ナチスドイツの偏狭に通底するものであり、危険な考え方だと思われる。【了】