保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

LGBT法案を巡って(2) ~50年前まで同性愛行為が違法だった英国~

英国は、今から僅か50年前まで、男性の同性愛行為は違法だった。イングランド及びウェールズで男性の同性愛が条件付きで非犯罪化されたのは1967年のことである。

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(英国ニュースダイジェスト 16 November 2017 vol.1495「19~20世紀を生きた 英国のクィアな文化人たち」)

 50年前まで同性愛行為を犯罪と見做していた国とそのようなことのなかった国とでは「差別」の意味合いが根本的に異なるということ、また、今なお同性愛行為を犯罪としている国が少なくないということも確認しておくべきである。

76 countries around the world still consider homosexuality illegal, five of them punish homosexual acts with death.

(世界の76カ国が同性愛を違法としており、そのうち5カ国は同性愛行為を死刑としている)

https://web.archive.org/web/20140323102828/http://ilga.org/ilga/en/article/mqsH5ek1ED

《国際的に見れば、欧州連合(EU)全加盟国や米国の多くの州などで性的少数者への差別禁止法が制定されている。日本も差別を法律で禁止するよう国連から勧告を受けてきた。さらに五輪憲章も、性的指向による差別を禁止している》(5月27日付中國新聞社説)

 かつての英国のように同性愛行為が犯罪として法的に罰せられるというのであれば政治が解消に動くというのも分からないではない。が、性的少数者差別を禁止するというのは、性的少数者を政治的に贔屓(ひいき)しようということだ。これは一種の「思想統制」に他ならない。

自民党の保守派が反対する理由は、どこまでの言動が差別に当たるかが明確でないうえ、これを根拠に被害者が裁判を起こすケースが増えるというものだ》(同)

 差別すべきではないという「べき論」と、差別してはならないという「禁止論」とには大きな開きがある。安易に法律で差別を禁止しようとするのは社会の閉塞感を増すだけであろうから気を付けるべきだ。

《20日の自民党会合では、超党派の議連で与野党が合意した「LGBT理解増進法案」の審査が行われていた。

会合は非公開だったが、出席議員から「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」という趣旨の発言があった》(HuffPost 2021年05月22日10時39分)

 会合が非公開であったにもかかわらず、情報が筒抜けになっているのもおかしな話である。自民党はおかしな思想の持主たちに相当侵食されてしまっているということなのだろう。

 「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」という発言は「意見」である。これを「差別」と称して抑え込もうとするのは言論弾圧であるし、ましてこのような「意見」が出て来なくなるように法的に縛りを掛け言論を封殺しようとするのは、「全体主義」的手法と言わざるを得ない。

 「道徳的にLGBTは認められない」という意見と「トランスジェンダー女性を犯罪性と結びつけるな」という意見はまったく噛み合っていない。否、相手の話を聞かず、ただ自分の言いたいことを言っているだけである。これでは議論は成立しない。【続】