保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

LGBT法案を巡って(4) ~価値平等は野蛮化~

《法案を巡っては、理解増進に重点を置く自民と、差別解消を盛り込むべきだとする立憲民主党の立場に開きがあったが、目的と基本理念に「差別は許されない」との文言を追加することで折り合った。

 合意した要綱案は「性的指向性自認の多様性を受け入れる精神の涵養(かんよう)と寛容な社会の実現」を強調している。国や地方自治体の努力義務として、LGBTなどへの国民の理解を増進する施策の実施を定めた》(5月27日付南日本新聞社説)

 「差別」という言葉には負の心象が纏(まと)わりついている。だから「差別は許されない」と言われれば誰も反論できない。

 が、例えば、商品の販売戦略において他社と「差別化」を図るのは当然のことであろう。他社と同じ商品を作っても需要は喚起されないのである。会社採用においても同じである。みんなと同じ人間に魅力はない。他人にはない部分、すなわち「差別化」こそが問われるのである。

 「差別」を認めないのはまさに「共産主義思想」そのものである。価値の違いを認めず「平等」を旨とし抑え込めば、社会の活力は失われていく。それは20世紀ソビエトの社会実験の結果からも明らかである。

《自由も美徳も法秩序も、文明社会の文明性のすべては不平等の中に育まれて成長したものであるから、「平等」の強制は、“自由の死” “美徳の死” “法秩序の死”を不可避とする。「平等」をもって「近代的」「進歩的」「善なるもの」と錯覚するのは、今や世界広しといえども日本しかない。平等主義が絶対視される「平等社会への移行」は、北朝鮮を見るまでもなく、「野蛮への退歩」以外になることはない。そこには美徳はおろか倫理・道徳すらなく、むろん自由はひとかけらもない》(中川八洋『国民の憲法改正』(ビジネス社)、p. 167

《法案を担当する党特命委員会の稲田朋美委員長は25日、政調審議会に出席。24日の合同会議で党内手続きを進めることに了解を得たと報告した。異論に配慮してこの日の議論は見送った。稲田氏は27日の政審、28日の総務会で了承を得た上で、公明党や野党と共同で国会に提出したい考えだ。

 24日までの合同会議では、野党との修正協議を受けて、法案に「差別は許されない」と盛り込まれたことを懸念する声が続出。議論は2日間で計6時間近くに及んだ。全会一致が原則の政審、総務会ともにメンバーには慎重派が含まれており、賛同を得られるかは不透明だ。

 与野党が共同提出する法案では省略できる委員会質疑を慎重派が求めていることもネックだ。自民党の衆参国対幹部は「審議時間を取れないから、今国会での成立は無理だ」と口をそろえる。与党は、LGBT法案を審議する内閣委員会では安全保障上重要な土地の利用を規制する「重要土地等調査法案」が優先で、その処理が会期末ぎりぎりになる見込みのためだ》(「LGBT法案、成立困難か 自民、集約見通せず」:JIJI.COM 5/26() 7:17配信)

 目下のコロナ禍の中、経済的にも精神的にも追い込まれている人達は数えきれないだろう。喫緊の課題がコロナ対応であることは誰の目にも明らかなのに、どうして今LGBT法案なのか。【続】