保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

選択的夫婦別姓再考(2) ~夫婦別姓はマルクス主義思想~

――反対派の主張の一つに、「夫婦別姓なんかにしたら、婚姻制度を悪用する輩が出てくる」というものがありますが、千葉市でパートナーシップ制度を始めて、そのような悪用例が出ていると言えますか。

熊谷俊人千葉市長(当時)】今まで不正は確認されていません。そもそも事実婚というものがあるじゃないですか。パートナーシップ制度を始めたときにも、その指摘がありましたが、「すでに事実婚や内縁状態の方はたくさんいますし、周囲から認められていますよ」と言うと、もう反論はなかったです。事実婚に関しては何十年と、それは千葉市のみならず、全国で普通に国、県、市の行政体で認めてきていますから。

(和久井香菜子:WEZZY 2020.04.17 12:00

 言うまでもなく、パートナーシップ制度で問題が起こらなかったからといって夫婦別姓婚に問題が起こらないとは限らない。また、同性婚のみならず事実婚も含めた千葉市のパートナーシップ制度に問題が起こらなかったからといってパートナーシップ制度全般に問題がないという証明にもならない。

【熊谷】これだけ事実婚やパートナーシップ制度が普及してきた今、「選択的夫婦別姓制度」に関してだけまだその議論をするのですか? アンフェアだと思いますよ。それだったら一気にさかのぼって、事実婚やパートナーシップ制度に関して議論しないといけなくなるでしょう。そうすると、社会的影響はすさまじいものになるだろうと思います。

 パートナーシップ制度や事実婚や内縁といったものと夫婦別姓婚とを同列に論じられるものではない。どうして熊谷氏は同じものだと思っているのだろうか。例えば、「相続」一つとっても異なる議論が必要である。

【熊谷】今でも実際には、親の離婚や再婚、里親、いろんなかたちで既に日本社会で別姓と同じような状況にある家族がいます。なぜ選択的夫婦別姓制度に関してだけ、親と子の姓の話がこれだけ議論になるのかが、私には分かりません。

 <選択的夫婦別姓>だけであれば大した問題ではないと言えるのかもしれない。が、「蟻の一穴から堤が崩れる」(韓非子)という問題もある。

《千丈の隄(つつみ)も螻蟻(ろうぎ)の穴を以て潰(つい)え、百尺の室も突隙(とつげき)の煙を以て焚(や)く。故に白圭(はくけい)の隄を行(めぐ)るや其の穴を塞(ふさ)ぎ、丈人(じょうにん)の火を慎しむや其の隙を塗る。是を以て白圭に水難なく、丈人に火患なし。是れみな易きを慎しみて以て難を避け、細を敬(つつ)しみて以て大に遠ざかる老なり》(『韓非子』第21 喩老篇:『世界の名著 10 諸子百家』(中央公論社)、p. 479

 だから、たとえ小さな譲歩であってもすべきではないという意見もあるだろう。

 が、問題は、むしろこの先に「戸籍廃止」があり、「家族解体」が待ち構えているということである。つまり、<選択的夫婦別姓>は、マルクス・エンゲルス共産党宣言』と同一線上にあるものだから認められないということなのである。【続】