保守論客の独り言

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選択的夫婦別姓再考(3) ~選択的夫婦別姓は日本解体計画の序章~

熊谷俊人千葉市長(当時)は言う。

諸外国の中で、戸籍制度なんてものを持っている国はもはや我が国だけですよ。

(和久井香菜子:WEZZY 2020.04.17 12:00

 戸籍制度が必要なものか否かは外国にこの制度があるか否かとは関係がない。「欧米は日本よりも優れた国々であり、その欧米に戸籍制度がないのだから不要だ」と考えるのは前提が間違っている。日本後進国論こそ改めるべきである。否、共産主義社会を目指そうとする国々から見て遅れているように見えるのであれば、むしろ喜ばしい限りではないか。

――そうは言っても戸籍を維持しておくことで何かメリットはあるのでしょうか。

【熊谷】一つあるとすれば、合理的だということですね。行政が血統書を管理することは、ある種、社会としては合理的です。そうでないと、それぞれの人たちが自らの血統書を確認したいとなったときに、公証役場を使いながら個人で確認する必要が出てくるからです。われわれ行政が国民の血統書や家族の婚姻状況などを把握していることによって、個人がその情報を得ようとするときには簡単に引き出せます。そのかわり、究極の個人情報を行政が握っている。先進国のなかで極めて特殊な社会構造、社会システムだということですね。

 <合理的>なのに<先進国のなかで極めて特殊>とはどういう意味か。先進国が非合理的という意味なのか。

――印鑑なんて、なくなったらもう1回新しいのを買えばいいだけの話なので、全然なんの証明にもならないですね。

【熊谷】本当に面白いですよね。マスメディアでちゃんと、我が国の特殊性について議論した方が良いと思います。私はこの特殊性を全て否定するわけではありませんが、「特殊である」という基礎認識は、しっかり持ったほうがいいと思います。

 書類に捺印することの意味を考えたことがない人にとってハンコは時代遅れの「無用の長物」ということなのであろうが、押印された印鑑に何の意味も見出さないのもまた安物の唯物論者である。

 成程、ハンコ文化は世界的に見れば特殊なのであろう。が、特殊だからといってそれが間違っているかのように言うのは間違っている。昨日今日始まったものではないものにはそれなりの意味があるのであって、ただ自分が意味を見出せないからといって、それを一般化し、意味がないと即断するのは余りにも短絡的である。

【熊谷】一部の方にとって戸籍は、非常にシンボリックなものです。感情というのは政治において重要です。改革を強引にやると、結果的に社会としての亀裂が走る危険性があります。

 ですから私は、選択的夫婦別姓を反対される方々の反対感情を刺激しないよう、新法でやるのがいいと思います。戸籍に触るよりは新法で施行して、結果的に5年10年経って、なんの問題も起きなかったことを実証して、最後は戸籍制度を変えるのが妥当じゃないでしょうか。その頃にはもしかすると「そもそも我が社会において戸籍っているの?」という話にたどり着くかもしれません。

 先には<戸籍廃止>がある。さらにその先には天皇制廃止もあるのだろう。<選択的夫婦別姓>は日本解体計画の序章に過ぎないということに我々は留意すべきである。【了】