保守論客の独り言

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米国弾劾裁判:トランプ氏無罪から考える(2) ~米国の民主主義とは超富裕層が既得権益を守ることなのか~

《原則や規範を無視したトランプ氏のふるまいは、4年前の就任時から繰り返されていた。司法を軽んじ、事実に基づく報道を敵視し、分断をあおる政権を議会与党は黙認してきた》(2月17日付朝日新聞社説)

 司法判断が必ずしも正しいとは限らない。報道が常に事実に基づいているとどうして言えるのか。

《米国の歴史的な景気拡大は上位1%の超富裕層の富を膨らませ、彼らの資産はミドル層とアッパーミドル層の人々の合計資産額を上回ろうとしている》(Bloomberg 2019年11月11日 15:43 JST

 つまりトランプ氏は、この上位1%の超富裕層が国を牛耳る米国の「似非(えせ)民主主義」に反発したのである。

《トランプ現象を生んだ土壌としては、グローバル化と産業構造の転換に伴う経済格差の広がりがあったことは間違いない。そのひずみは、これまでの両党の歴代政権の間に長く蓄積されてきたものだ》(同、朝日社説)

 米国の格差問題が<分断>の根っ子にあり、トランプ氏の言い分にも理がないわけではないということである。

《問題の本質的な改善に取り組むのではなく、問題に乗じて自らの支持層の怒りをあおり、国内外に敵を定めて攻撃する。そんなトランプ政治の台頭により、どれほど統治をめぐる信頼が傷つけられ、社会の寛容さが失われたことか》(同)

 極端な格差を容認することが<社会の寛容>というものなのか。トランプ氏の手法は荒っぽ過ぎたのも確かであろう。が、トランプ氏の手法のみならず、トランプ氏自体をも攻撃するというのでは、超富裕層が既得権益を守ろうとしているだけなのではないかと思われても仕方がないのではないか。

Democracies work best—and survive longer—where constitutions are reinforced by unwritten democratic norms. Two basic norms have preserved America’s checks and balances in ways we have come to take for granted: mutual toleration, or the understanding that competing parties accept one another as legitimate rivals, and forbearance, or the idea that politicians should exercise restraint in deploying their institutional prerogatives.

These two norms undergirded American democracy for most of the twentieth century. Leaders of the two major parties accepted one another as legitimate and resisted the temptation to use their temporary control of institutions to maximum partisan advantage. Norms of toleration and restraint served as the soft guardrails of American democracy, helping it avoid the kind of partisan fight to the death that has destroyed democracies elsewhere in the world, including Europe in the 1930s and South America in the 1960s and 1970s.” --Steven Levitsky & Daniel Ziblatt, How Democracies Die: What History Reveals About Our Future

(民主主義は、憲法が民主主義的な不文律によって補強されているところでは、最もうまく機能し、より長く存続する。2つの基本的な規範が、私たちが当然と考えるようになった方法でアメリカの抑制と均衡を維持してきた。すなわち「相互容認」、つまり競合する政党がお互いを正当なライバルとして受け入れるという合意、そして「自制」、つまり政治家が制度上の特権を行使する際には節度を弁(わきま)えるという考えである。

この2つの規範が、20世紀のほとんどの間、アメリカの民主主義を補強していた。2大政党の指導者たちは、お互いを正当なものとして受け入れ、一時的に制度をコントロールして党派的に最大限の利益を得ようとする誘惑に抗したのである。容認と自制の規範は、アメリカの民主主義の柔らかな護輪軌条(ガードレール)となり、1930年代のヨーロッパや1960年代、1970年代の南米をはじめとして世界の他の地域で民主主義を破壊した類の党派的死闘を避けるのに役立ったのである)​【了】​