保守論客の独り言

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都合の良い民主主義を語る民主主義信者(3) ~目指すべきは英国流の民主主義~

第一次世界大戦後のドイツも同様です。当時、最も民主的な憲法とされたワイマール憲法を持ちながらも、ヒトラー率いるナチスの独裁を許し、戦争や虐殺で多くの命が失われました》(2月7日付東京新聞社説)

 が、丸山眞男は次のように言う。

《日本のファシズムでは、民主主義は真向から否定されるのですが、ナチスではそうではない。ワイマール的民主主義は否定されるが、民主主義一般は否定しておりません。むしろナチスのつもりでは、ワイマール的乃至(ないし)は英米的民主主義はユダヤ的金権主義で、自分の方が本当のドイツ的民主主義であると称していたのです。

 むろんこうした言いぐさは宮沢教授の言葉をかりれば、「独裁政理論の民主的扮装」にすぎないのですが、ともかくデモクラチックな扮装をまとわねばならなかったというところに、民主主義がドイツにおいてもすでに抜くべからざる根を国民的地盤の上におろしていたことを物語っております》(丸山眞男「日本ファシズムの思想と運動」:『増補版 現代政治の思想と行動』(未来社)、p. 62)

 おそらく東京社説子は、民主主義に傷が付くことを怖れて、ナチスドイツは民主主義ではなかったことにしたいのであろう。が、ナチスドイツは民主主義的過程を経て生まれた民主主義の鬼子(おにご)なのであって、このことを隠そうとすれば、むしろ民主主義が胡散臭くなってしまうだけではないか。

《民主主義はトランプ政権の米国に限らず、歴史を振り返れば極めて脆弱(ぜいじゃく)です。だからこそ、民主主義を損なう動きがあれば、敢然と立ち向かわねばなりません。

 一人一人の努力なしに民主主義は維持できず、傷付いても再生する復元力が働かないのです》(同、東京社説)

 差し詰め私は民主主義教徒ではない。民主主義を強く否定するわけでもないが、少なくとも信奉するわけでもない。

 民主主義にはどうしても左翼思想がつきまとい、現実を忘れ、頭でっかちの理想を追い掛けようとするところが性に合わないのである。

 大事なのは、社会の自由や公正を守ることであって、民主主義を守ることではない。重要なのは英国のように「法の支配」を尊重することだと思う。つまり、国民を暴走させないための「檻」(おり)が必要だということである。

 目指すべきは英国流の民主主義である。「革命」を志向してきた大陸流の民主主義とは一線を画さねばならない。

 「法の支配」が民主主義と結びついて発展した原理であるのと異なり、「法治主義」はどのような政治体制とも結びつき得る原理である。「法治主義」は、手続として正当に成立した法律であれば、その内容の適正を問わない。【了】