保守論客の独り言

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安倍外交を総括する(2) ~質量転化の法則~

《「積極的平和主義」「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」―この7年8カ月、安倍晋三首相は、そうした言葉で外交方針や成果をアピールしてきた。

 首相官邸のホームページ(今年1月17日現在)によると、訪問した国・地域は80、飛行距離は地球40周分近くになるという。

 さまざまな国・地域を積極的に訪問し、首脳らと膝を交えて会談する。日本の考え方や立場、方針を丁寧に伝え、理解してもらうのは意義がある》(9月1日付高知新聞社説)

 外交において安倍晋三首相を最も評価すべき点は「外遊の量」である。一般に、「量」のみならず「質」も問われなければならないのであるが、量が圧倒的であれば質も向上する。「質量転化の法則」である。安倍首相の圧倒的な量の外遊によって日本の評価が高まったであろうことは想像に難くない。

どこかに通じている大道(だいどう)を
僕は歩いているのじゃない
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
道は僕のふみしだいて来た足あとだ
だから
道の最端にいつでも僕は立っている
高村光太郎「道程」)
 

安倍氏が一貫して内外に印象づけたのは、米国に寄り添う姿である。集団的自衛権の一部行使に道を開いた安全保障法制を強引に成立させたのも、日米同盟の強化のためとされる。

 だが、憲法解釈を無理やり曲げてまで追随した米国は、トランプ政権下で「自国第一」を掲げている。両首脳は「蜜月」ぶりで耳目を引いたが、その内実は、日本が米国製の武器を大量買いする一方、貿易交渉では不利を強いられる構図だった》(9月3日付朝日新聞社説)

 日本が米国に隷属しているのは戦後一貫したことであって、<安倍氏が>などと特別視するのはおかしい。が、日本がそう置かれた中で、安倍首相が全方位外交を敷いたことを諸外国が評価していることは間違いない。朝日社説子が言っていることは、自分の目にそう映っていたというだけの話であり、要は「妄想」である。

安倍氏は第2次政権発足直後の所信表明演説で、こう宣言した。「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった、基本的価値に立脚し、戦略的な外交を展開していく」

 強権政治が広がり、モラルがかすむ世界にあって、普遍的価値観を共有する国々との連携を深めるのは、賢明な道である。ただ、残念ながら安倍政権の外交は行動が一致しなかった》(同)

 文化や宗教の異なる国や民族をまとめていくためには、取り敢えず<自由、民主主義、基本的人権、法の支配>を基軸に据えるしかない。朝日社説子も<賢明な道>と言っている。が、どうしても安倍外交を否定したい朝日社説子は、<安倍政権の外交は行動が一致しなかった>とケチを付ける。蛇足も蛇足、「大蛇足」である。【続】