保守論客の独り言

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米国弾劾裁判:トランプ氏無罪から考える(1) ~民主主義は本当に脆弱なのか~

《トランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂を占拠した事件を巡る弾劾(だんがい)裁判で、議会上院はトランプ氏を無罪とする評決を下した。

 陪審員役の上院議員100人のうち、有罪としたのは与党・民主党系の50人に野党・共和党の7人を加えた57人だった。過半数には達したが、有罪評決に必要な3分の2(67人)を下回った》(2月16日付読売新聞社説)

合衆国憲法第2条第4節

大統領、副大統領及び合衆国の全ての文官は、反逆罪、収賄罪又は其の他の重罪及び軽罪に就き弾劾され、且つ有罪の判決を受けた場合は、其の職を免ぜられる。

 憲法に照らせば、大統領選挙に敗れたトランプ氏は弾劾の対象から外れるはずである。が、トランプ氏は弾劾裁判に掛けられた。

《弾劾裁判は、上院の出席議員の3分の2の賛成で、大統領を罷免する仕組みだ。通算4回目だが、今回は初めてすでに退任した大統領にその資格があったのかどうかを遡って審理した。

訴追した民主党は、議事堂占拠の直前にあったトランプ氏の集会での演説の映像を流し、支持者を扇動したのは明らかと主張した。共和党は「退任後の弾劾は憲法違反だ」として、主に法的な手続きの観点から争った》(2月16日付日本経済新聞社説)

 民主主義派を標榜する米民主党憲法規定を無視してトランプ氏を弾劾裁判に掛けることは羊頭狗肉(ようとうくにく)である。これは即ち恣意(しい)的に民主主義を弄(もてあそ)んでいることに他ならない。

《バイデン大統領は、事件は民主主義が脆弱(ぜいじゃく)であることを示したと強調した。陰謀論が過激な暴力に結びつく危険性を、すべての米国民が肝に銘じてもらいたい》(同、読売社説)

 が、民主主義は本当に脆弱なのか。それとも脆弱性を装って民主主義への攻撃をかわそうとしているだけなのか。

 否、バイデン大統領の言う<民主主義>は、本当に普遍的な民主主義なのか。それとも既得権益を守るための単なる表看板ということはないのか。

 バイデン氏の論法では、トランプ氏は「ポピュリズム」だから<民主主義>でないということなのだろう。だとすれば、米国は半分が民主主義で半分が反民主主義ということになる。果たしてこれで米国を民主主義国家と呼べるのか。

 民主主義派が権力の座につくことが民主主義なのか。自分たちと相反する意見をも拾い上げてこその民主主義なのではないか。

 が、今回の非立憲主義的な米国の事態に日本のマスコミは異を唱えない。それは何故なのか。【同】