保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

菅首相の「自助・共助・公助」発言について(3) ~累進課税と共産党宣言~

国に依存するということは個人の自由を放棄するということである。

《今日において社会主義とは、もっぱら課税という手段を通じて広範囲な所得の再配分を行なうことを意味しており、また、福祉国家という制度のことを意味するようになってきている》(F・A・ハイエク『隷属への道』(春秋社)西山千秋訳、p. 368)

 個人が本来自由に使えるお金を税として政府に渡し、これを政府の意図で分配するのが福祉というものである。つまり、福祉の充実を図れば図るほど、個人が自由に使えるお金が減っていく。

 これは、富者から集金し、それを貧者に配る「所得再配分」を意味する。一見博愛的に思われるかもしれないが、このようなやり方の行き着く先はどのような社会なのだろうか。

 金持ちほど高率の課税を行う「累進課税」の話は、マルクス・エンゲルス共産党宣言』に出て来る。つまり、「累進課税」それも「重累進所得課税」(A heavy progressive or graduated income tax)は、彼らにとって共産主義革命の1つのお膳立てだということである。

《労働者革命の第一歩は、プロレタリア階級を支配階級にまで高めること、民主主義を闘いとることである。

 プロレタリア階級は、その政治的支配を利用して、ブルジョア階級から次第にすべての資本を奪い、すべての生産用具を国家の手に、すなわち支配階級として組織されたプロレタリア階級の手に集中し、そして生産諸力の量をできるだけ急速に増大させるであろう。

 このことは、もちろんなによりも、所有権への、またプルジョア的生産諸関係への専制的干渉なくしてはできようがない。したがって、その方策は、経済的には不充分で不安定に見えるが、運動が進行するにつれて、自分自身を乗り越えてすすみ、全生産様式の変革への手段として不可避なものとなる。

 この方策は、もちろん、それぞれ国が異なるにしたがって異なるであろう。

 とはいえ、もっとも進歩した国々にとっては、次の諸方策はかなり一般的に適用されうるであろう。

 1、土地所有を収奪し、地代を国家支出に振り向ける。

 2、強度の累進税。

 3、相続権の廃止。

 4、すべての亡命者および反逆者の財産の没収。

 5、国家資本および排他的独占をもつ国立銀行によって、信用を国家の手に集中する。

 6、すべての運輸機関を国家の手に集中する。

 7、国有工場、生産用具の増加、共同計画による土地の耕地化と改良。

 8、すべての人々に対する平等な労働強制、産業軍の編成、特に農業のために。

 9、農業と工業の経営を結合し、都市と農村との対立を次第に除くことを目ざす。

 10、すべての児童の公共的無償教育。今日の形態における児童の工場労働の撤廃。教育と物質的生産との結合、等々、等々》

(『共産党宣言』(岩波文庫大内兵衛向坂逸郎訳、pp. 68-69)【続】