保守論客の独り言

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再び敵基地攻撃能力について(3) ~愚かなる論理の飛躍~

《敵基地攻撃能力は「専守防衛」から逸脱するとの懸念が根強く、与野党から慎重な検討を求める声が上がる。専守防衛は日本の防衛政策の根幹である。拙速な議論は許されない》(7月18日付南日本新聞社説)

 <専守防衛>などという自縄自縛(じじょうじばく)はとっとと解くべきだ。<専守防衛>は必然的に日本における「本土決戦」ということになる。が、これほどの愚かな策がないことは、太平洋戦争における大都市絨毯爆撃、広島長崎への原爆投下など痛いほど経験済みではないか。<専守防衛>にこだわって、抑制的な敵基地攻撃能力の保有までをも否定するというのはどうかしている。

北朝鮮は近年、機動性に優れる固体燃料を使ったミサイル開発を推進している。意図や発射拠点を正確に把握するのは極めて難しいだろう。専守防衛との境界線が曖昧になる恐れがつきまとう。

 また、実現には装備や技術面でも高いハードルがある。敵基地の所在を確認するだけでなく、敵の防空能力の無力化や十分な打撃力が必要とされる》(同)

 こういった技術的な問題があるのは分かる。が、敵基地攻撃能力を保有することと、実際に敵基地を攻撃するということとは分けて考えるべきだ。実際に敵基地攻撃を行うかどうかの判断が難しいからといって、敵基地攻撃能力自体を保有すべきでないというのは愚かなる論理の飛躍でしかない。

《日米同盟の在り方も変質が迫られる。日本は戦後、日米安保条約に基づき、米軍を「矛」、自衛隊を「盾」として役割を分担してきた。敵基地攻撃能力の保有は、日本が「矛」を持つことになりかねない》(同)

 米ソ冷戦時代は終わり、今や米中新冷戦時代に突入しようとしている。時代状況が大きく変容する中で、<日米同盟の在り方も変質が迫られる>のはむしろ当然のことである。

《政府が北朝鮮以上に神経をとがらせているのが中国の動向だ。先月、奄美大島近くの接続水域を潜航した潜水艦を「中国のものと推定している」と明らかにした。潜水艦の国籍公表は異例のことで、中国をけん制する狙いがうかがえる。

 20年版防衛白書でも、沖縄県尖閣諸島周辺での領海侵入は「現状変更の試みを執拗(しつよう)に継続している」と強調、強い懸念を表明した。日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している》(同)

 だから防衛力を強化すべきだと言うのかと思いきやおかしなことを言い出す。

《だが、相手の軍事力の拡充に対抗する防衛政策を続けていいのか》(同)

 いいも何も対抗する防衛政策を続けなければ領土を掠(かす)め取られてしまいかねない。

《20年度の防衛予算は5兆3000億円超で一般会計歳出の5.2%を占める。ますます増大すれば、いずれ国民へのしわ寄せは避けられまい》(同)

 国土防衛のためには国民の負担が増すのは仕方がない。領土を取られ人権弾圧国家の好き放題にされるよりはるかにましである。

《日米同盟を基軸にしながら防衛力は必要最小限にとどめ、日中関係が緊迫しないよう外交努力にこそ注力すべきである》(同)

 実際そうしている。が、話し合いではどうにもならないからこそ、敵基地攻撃能力の保有を検討しようということなのではないか。【了】