保守論客の独り言

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日米安保条約改定60年について(2) ~毎日社説子の矛盾した防衛論~

《条約は一方で米軍への基地提供を義務付けた。米軍は抑止力を提供しただけでなく、日本周辺海域の航行の安全を確保し、貿易の拡大など経済的な恩恵も双方にもたらした。

 共通の敵だったソ連の崩壊後も同盟が存続したのは、北朝鮮や中国など新たな脅威に対処する安定装置としての役割を見いだしたからだ》(1月19日付毎日新聞社説)

 これを毎日新聞が書くとは驚きである。まさに日本の平和は在日米軍あればこそであったということである。

 が、在日米軍は日本の平和を守るための「番犬」ではない。アジア西方へ軍事展開する拠点として存在しているのである。在日米軍の「軍事力」は<抑止力>以上のものである。

 <共通の敵>という言い方も引っ掛かる。米ソ冷戦を戦う米国と、米国に隷従してきた日本とではまったく立場が異なる。

《日本にとって米国との同盟が安全や経済の利益を最大化する基盤であることに変わりはない。同盟の維持と強化は最も現実的な選択だろう》(同)

 このような評価は戦後日本の米国隷従政策を追認するものであり、私は断じてこのような見方に与(みく)しない。日本が独立国であるならば、やはり「自主防衛」を目指すべきである。

 おそらく毎日社説子は米国の「ウィーク・ジャパン派」と同様に、日本が「普通の国」になることをおそれ、日米安保によって、日本が「自主防衛」と称して軍事力を拡大することに「蓋(ふた)」をしておきたいということなのだろうと思われる。

 が、突然論調が破綻する。

《米国依存が生んだ対米追従の構図から脱却することも迫られる。

 今回の中東海域への護衛艦派遣は米国に配慮した結果だ。自衛隊の海外派遣は日本の安全を優先にすべきで安易な運用は平和主義を損なう。

 米国追従のいびつさを象徴するのが沖縄の米軍基地問題である。

 日本政府は安保をたてに沖縄の反発を抑え込もうとしている。そうして建設された基地の運営は不安定になる。米国の利益にもならない》(同)

 一方で<同盟の維持と強化は最も現実的な選択>だと言っておきながら、他方米国追従を改めよとは明らかな「矛盾」である。

 自衛隊を中東に派遣しないことが米国追従を改めるということではない。憲法の制約は日本国内だけの話であり、他国には関係のないことである。自らは汗もかかず、ただ米国にペルシャ湾における日本のタンカーの安全を守ってもらうなどという虫の良い話があるのだろうか。

 米国隷従を改めるということは自主防衛に踏み切るということである。その上で新たな日米同盟関係を構築するという選択はあるだろうし、私はそのように主張してもいる。自主防衛とは日本一国で防衛するという意味ではない。足りない部分は他国と協力関係を築くことが必須である。【続】