保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

核抑止論について(3) ~日本が自立するためには避けられない「核論議」~

西部邁氏は日本が核武装することが必要だと言う。

《その理由は、第一には日本が核武装諸国に囲まれていること、第二にアメリカから実質的に独立するには個別的自衛力を強めるほかないということである。

--とくに重要なのは核武装による対米独立なのであって、それがなければ、たとえばアメリカの要請によって北朝鮮への武力侵攻にも日本が参加しなければならなくなるかもしれない。「前線での武力使用」を認めた安保法制そのものは一人前の国家たらんとするなら当然の準備だが、しかし、その集団自衛のパートナーとやらは侵略性を長きにわたって剥き出しにしてきた(日本の宗主国ともいうべき)アメリカである。

そしてそのアメリカには中国と事を構える体力も気力もない。そのため、我が国は、対米従属を続けるなら(おそらくは尖閣諸島を中国に奪われることとの引き換えで)米中の対朝支配に加担する、という構図すらが極東のゲオポリティクス(地政学)として描き出されてくるのだ。

「自尊と自立のための安全と生存」という国家の根本を忘れ「安全と生存を自己目的化してしまった」(国民ならぬ)単なる人民は、こうした地政学的展望のなかで生きるしかないのである》(西部邁『保守の真髄』(講談社現代新書)、pp. 204-205)

 日本が核保有国となることを今の国民が良しとするとはとても思われないけれども、米国の状況次第ではこのような選択をせざるを得なくなるかもしれないということは知っておいてよいだろう。否、それどころか、今米国では核を拡散することが平和に資するとする考え方が登場してもいる。

アメリカのいわゆるニュー・リアリスト(新現実主義者)の研究者たちは、ほぼこぞって、「核」の拡散は国際秩序の安定化に寄与する、と主張している》(西部邁核武装論』(講談社現代新書)、p. 48)

 いつまで日本は米国に隷従し続けるつもりなのか。当たり前であるが、日本が米国に隷従し続ける限り、沖縄に米軍は駐留し続け基地問題は解決しない。横田基地もあり続け、制空権が奪われ日本の航空機は自由に飛行できない。

 何よりトランプ米大統領は、在日米軍への「思いやり予算」の増額を言い出してもいる。この話は本来逆だ。日本の領土を間借りしている米軍が賃料を収めるべきである。が、そうならないのは、日本が米軍に守ってもらっているとする力関係によるものである。

 が、在日米軍は日本を守るために駐留しているのではない。米軍がアジアに展開するための前線基地として日本に駐留しているだけである。そんな米軍にどうして「思い遣り」が必要なのか。

 日本は自立しなければならない。が、もし米軍が日本からいなくなれば極東アジアの「力の均衡」は崩れてしまう。「力の均衡」が崩れれば、他国の侵略欲を高めかねない。

 だから日本が自立するためにはどうしても核を保有すべきか否かの議論を避けることが出来ないのである。【続】