保守論客の独り言

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「#検察庁法改正案に抗議します」と呟く流行り病(5) ~山尾志桜里衆院議員の論点整理~

山尾志桜里衆院議員が論点を次の4つに絞って意見を述べている。

①「国家公務員の定年引上げにまで反対するのか」

②「検察官も国家公務員なんだから同じでよいじゃないか」

③「起訴独占主義や人質司法の問題に比べれば些末」

④「反対する人は検事総長は誰が決めるべきだと考えているのか」(​『note』:2020/05/12 20:06​)

 ①は「束ね法案」になっているのが問題なのであって、山尾議員も言うように、

国家公務員法改正案と検察庁法改正案の束ねをほどいて、前者は成立させ後者はコロナの収束を見ながらじっくり議論すればいい》(同)

だけの話である。

 ②はさらに次のように論点を再整理している。

❶一般の国家公務員だけでなく「検察官」に対してまでも

❷内閣が選んだ個別の検察官に対して「特別」に

❸定年「延長」させることができるし

❹さらに特別に「役職を維持」させることもできるようになってしまう(同)

 つまり、今回の法案が成立すれば、内閣の「依怙贔屓(えこひいき)」の余地が格段に広がることが問題だと山尾議員は言うのである。

《検察官は国家公務員(行政の一員)なのに司法の一員でもあるという特別な仕事です。内閣総理大臣を起訴することもできる唯一の国家公務員職です。だから、個別の人事については内閣(行政)の関与の余地を小さくして、内閣からの独立を維持する必要があります。この必要性は三権分立(その中でも司法と内閣の分立)という国家統治の基本から導かれる要請なので、この要請を勝手に無視して他の国家公務員と同じ扱いにしてしまうと、国の基本構造を壊してしまう。だから、検察官は国家公務員ではあるけれども、他の国家公務員と違う扱いをしなければならない、のです》(同)

 私は検察庁に政府の番犬のような役割を期待するのはよろしくないと思う。確かに検察庁は時として自らが所属する行政をも捜査対象とする。が、それは例外的な事象である。やはり検察は、選挙によって信認を得た時の政府の意向を汲んで職務に当たるのが本筋であろう。

 行政から距離を置き独自に判断を下すことは、世論に煽られ、戦後の左寄り偏向教育の影響を受けかねず、「鹿を追う者は山を見ず」(1つのことに夢中になって、他のことに余裕がなくなる)ということになりかねない。

 ③には、

《「強すぎる」検察権力を統制するために刑事司法手続きを改善することも必要だし、「強すぎる」検察と内閣の緊張関係を維持・強化することも必要で、どちらも大事だと思う》(同)

と言うけれども、これでは答えになっていない。

 ④も、

検事総長人事については今のところ内閣以外に適格な権限の置き場所が見当たりません。なので、現時点では制度としても運用としても内閣が決定権を持つしかないと考えています》(同)

と言うだけである。

 論点整理という意味はあっても、山尾議員が法案に問題があるという立場なら、もう少し明確に問題点を列挙し、自分の意見を付すべきではないか。【了】