保守論客の独り言

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緊急事態条項は憲法に必要か(3) ~ナチス・ドイツに例える愚~

憲法は、衆参両院は総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開けないと定める。緊急事態においては、定足数を満たせない可能性はありうる。

 立法府が機能しなければ、予算や法案を成立させることができず、的確に対処できまい》(5月3日付読売新聞社説)

 予算といった既知の問題であれば対応の仕方は何かあるだろう。が、想定外の緊急事態に陥れば、想定外の対応を迫られることになるやもしれない。そのために緊急事態条項が必要なのではないか、というのが本来の議論である。

自民党は、大災害で国政選が実施できない場合、憲法が規定する衆院4年、参院6年の国会議員の任期を特例として延長できるようにする案も示している。

 今の衆院議員の任期は、来年10月までだ。緊急事態が起きて、広い範囲で国政選を行えなかった場合、多数の議席が欠員になる可能性もありうる。民主主義を適切に機能させる観点から、各党は、対応策を詰めなければならない》(同)

 憲法に書きこむべき「緊急事態条項」とはこういう想定される話ではない。こういう詰まらぬ話はさっさと話を詰めておくべきである。

《国会の憲法審査会では与党側が「緊急事態時の国会機能の在り方」というテーマを投げかけています。

 「議員に多くのコロナ感染者が出た場合、定足数を満たせるか」「衆院の任期満了まで感染が終了せず、国政選挙ができない場合はどうする」》(5月3日付東京新聞社説)

 これに対し長谷部恭男早大教授は言う。

 「不安をあおって妙な改憲をしようとするのは、暴政国家がよくやることです」

 「大型飛行機が墜落して、国会議員の大部分が閣僚もろとも死んでしまったらどうするかとか、考えてもしようがないこと」(同)

 何がどう<妙>なのかを言わずに<暴政国家>とだけ烙印を押して批判するのは学者としてどうなのか。東京社説子も続ける。

《確かに「非常時」に乗じるのが暴政国家です。ナチス・ドイツの歴史もそうです。緊急事態の大統領令を乱発し、悪名高い全権委任法を手に入れ、ヒトラーは独裁を完成させたのですから…》(同)

 そのナチス・ドイツを民衆は熱狂的に支持したのである。<暴政国家>を生み出したのは民衆であり民主主義であった。

 翻(ひるがえ)って、今の日本には民衆の熱狂はない。よって、今の日本がナチス・ドイツのような<暴政国家>であるはずもない。

衆議院の任期切れの場合なら、憲法54条にある参議院の「緊急集会」規定を使うことが考えられます。「国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」との条文です》(同)

 憲法問題なのだから、憲法審査会での審議を拒否せずに、対応法を確認すればいいだけの話ではないか。【続】