保守論客の独り言

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2019年版防衛白書について(1) ~色眼鏡が掛かった神戸新聞社説~

2019年版防衛白書の概観は、「現在の安全保障環境の特徴」として次の3点を挙げている。

(1) 既存の秩序をめぐる不確実性が増大し、政治・経済・軍事にわたる国家間の競争が顕在化している。

(2) テクノロジーの進化が安全保障の在り方を根本的に変えようとしている。

(3)一国のみでの対応が困難な安全保障上の課題が顕在化している。

 そして「わが国周辺国などの軍事動向」を次のように書く。

(1) 米国は世界最大の総合的な国力を保有している。軍事力の再建、同盟とパートナーシップの強化、インド太平洋地域を優先地域と位置づけている。

(2) 中国は核・ミサイル戦力、海上・航空戦力に加え、宇宙・サイバー・電磁波領域の能力を強化。既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づき、力を背景とした一方的な現状変更を試みるとともに、東シナ海をはじめとする海空域において、軍事活動を拡大・活発化させている。その軍事動向は、安全保障上の強い懸念となっている。

(3) 北朝鮮は全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での廃棄は行っておらず、その核・ミサイル能力に本質的な変化はなく、その軍事動向はわが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威である。

(4) ロシアは極東においても軍事活動を活発化させる傾向にあり、その動向を注視していく必要がある。

 この白書に神戸新聞社説が茶々を入れる。

《日本周辺では米国と中国、ロシアなどが軍事的ににらみ合う。間隙(かんげき)を縫うように北朝鮮はミサイル発射を繰り返す。不測の事態の回避には関係国との連携が欠かせない。

 現状認識はその通りだろう。肝心なのは、「困難な課題」を解決するために何をするかである。

 その点で、白書は手詰まり感が否めない内容となった》(11月16日付神戸新聞社説)

 日本周辺で米国と中国、ロシアなどが軍事的に睨み合っているなどというのは誤解を招く言い方である。現在日本周辺にそのような緊張関係はない。

 中国には拡張主義的な嫌いが窺(うかが)われるが、だからといって米中が睨み合っているなどという状況にはない。明らかにこの<現状認識>には色眼鏡が掛かっている。

 また、<不測の事態の回避には関係国との連携が欠かせない>とは、日米同盟の重要性を意味しているのだろうか。

 さて、神戸社説子は<白書は手詰まり感が否めない>と言うが、それは憲法という縛りがあるからという意味なのか、安倍政権が適切な応対を怠っているという意味なのか。

 神戸新聞の日頃のスタンスからすれば、憲法を改正して軍事的な行動範囲を拡張するなどということではないだろう。だとすれば政権批判としてこのような言い方をしているのであろうと思われる。【続】