保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

中島岳志氏の保守論への疑問

朝日新聞のインタビューに応え、中島岳志氏は韓国への否定的言論の広がりの要因の1つを次のように述べる。

「韓国が経済成長で国力をつける一方、世界における日本の相対的地位が下がったこと。根底にはこうした変化があると思います。韓国の姿勢も『日本に言うべきことは言う』と変化していきました。隣国の韓国が自己主張を強める姿は一部の日本人にとって、自信喪失と相まって気に入らない。保守派、とくに年長の世代により表れていると思います」(朝日新聞デジタル2019年10月14日05時00分)

 根拠に基づかぬ印象論である。問題は、韓国側の反日的姿勢にあるのであって、<日本の相対的地位が下がったこと>からくるものではない。自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射は反日の最たるものである。

 昨年10月には1965年の日韓請求権協定を反故にするという徴用工最高裁判決があった。最終的かつ不可逆的に解決とされた日韓慰安婦合意も一方的に破棄された。

 文在寅大統領は今年の「3.1節」の記念式典に出席し、式辞の中で日本政府を批判した。

 「慰安婦問題の解決について、加害者である日本政府が『終わった』と言ってはならない」(2018年3月1日(木)12時52分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部)

――朝日新聞世論調査では、年長になるほど、韓国を「嫌い」と答える割合が増えていました。

 「韓国を過去に見下していたような中高年世代にそうした傾向がある程度、あることは納得できます。この世代が時の変化に追いつけていない。それが今の日本のナショナリズムの姿です」(同、朝日新聞デジタル

 どうしてこのように思うのか意味不明である。若い世代はかつて日韓併合時に、日本が持ち出しで、インフラを整備し、教育を普及し、コメの生産を高め、人口を倍加させたことを偏向教育のせいで知らないのだろう。まさに韓国の発展の礎を築いたのはこの時代であった。

 若い世代が嫌韓にならないのは、日本が韓国を植民地にし搾取したと思い込んでいるからではないか。

 中島氏は保守思想家の嚆矢(こうし)たるエドマンド・バークを引き合いに出して次のように言う。

「18世紀の英国の政治家エドマンド・バークに従えば、保守思想は、人間は不完全であり、人間の理性は間違いやすいと考えます。自分と異なる主張にも耳を傾け、『なるほど』と思える異論とも合意形成を図ろうとする。これが保守政治の矜持(きょうじ)です」

 これはまったくの誤解である。バークは異論と合意形成を図ろうなどとしていない。

 主著『フランス革命省察』の中で、バークはフランスの「人間の権利」を主張するトマス・ペインを痛烈に批判している。バークは、世襲財産としての権利は認められるけれども、「人間の権利」などというものは到底認められない旨を説得的に語ったのであった。異論と合意形成を図るのが保守政治の矜持などというのはバークの思想ではない。

「『自分たちこそ正しい。韓国はおかしなことを言い続けている』という頑(かたく)なな姿勢は、私には保守とは見えません」(同)

 日本人が頑ななのではない。韓国が北朝鮮との合邦を目指して、頑なに反日的態度をとり続けているのである。

「日韓ともに自分の思う『100%』をめざしている現状ではどうにもならない。膠着(こうちゃく)状態のときこそ解決の糸口を見いだすため、多元的なチャンネルを使う策もめぐらす。これも保守政治家の要諦(ようてい)です」(同)

 こんな<保守政治家の要諦>を勝手に作らないで欲しい。反日姿勢を改めない韓国との解決の糸口など見付かるはずがない。反日チキンレースを仕掛けてくる相手と和解することなど不可能である。