保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

自民党総裁選:産經主張を批判的に読む(1) ~玩具箱を引っ繰り返した様~

自民党総裁選について書く各紙社説を読んで、改めてその中身の薄さに唖然とせざるを得なかった。表層的な事ばかりを追い掛け続けてきたために、政治の本質について語る力が退化してしまったのではないかと心配される。

 産經新聞だけは他紙社説と異なり色々書いている。が、玩具箱をただ引っ繰り返した感が否めない。

《日本は難局に直面している。新型コロナの流行が続いている。覇権主義的な中国や核・ミサイル戦力の強化を続ける北朝鮮の脅威は増している。少子化も解決されていない》(9月18日付産經新聞主張)

 コロナ禍と外交安全保障を<難局>とするのはまだしも、唐突に<少子化>が付け足されたのは、問題が頭の中で整理されていない証左であろう。<少子化>は問題ないとは言わないが、例えば、コロナ禍による経済格差の広がりといった問題の方が遥かに重要であることは論を俟たない。

《4人は政府のこれまでの対応を総括した上で、今後のコロナ対策を語るべきである…人流の抑制、医療提供体制、検査、ワクチン・治療薬の開発と活用―のどこに足らざるところがあったのか。それらをどのように改め、コロナ禍を乗り越えていくつもりか。感染症から国民を守り抜く政策を聞きたい》(同)

 勿論、このようなより具体的な項目も検討すべきではあるが、新型コロナ最大の論点は、「ゼロコロナ」か「ウイズコロナ」かである。このどちらを選択するのかで対策は大きく異なってくる。このことを指摘せずして具体策に入っても意味がない(<人流>という用語を使っているのも気になる)。

《確かな安全保障は、平和と繁栄の基盤だ。それは相応の汗をかかなければ得られない》(同)

 <相応の汗>といった抽象的な言い回しではなく、もっと具体的に書くべきだ。

北朝鮮は、国連安全保障理事会の決議を無視して核・ミサイル戦力の強化を続けている。日本人拉致被害者を返さない》(同)

 北朝鮮の核開発の問題に拉致問題を付け足すような書き方も疑問だ。

《中国は軍拡を続け、力を背景に国際秩序に挑戦し、尖閣諸島沖縄県)を奪おうとしている。国内では香港や、ウイグル民族など少数民族に弾圧を続けている》(同)

 <尖閣諸島を奪おうとしている>は直截(ちょくさい)的に書き過ぎている気がするし、これとシナ国内の人権問題を一緒くたにして語るのもどうか。

 こういった問題は、詰まる所「集団的自衛権」問題に行き着く。台湾有事、朝鮮半島有事が起こったら米軍は何某かの行動を起こすだろう。日本はこの行動にどこまで加わるのかということを今のうちから考えておく必要がある。

 憲法を盾に協力を拒否すれば、シナが尖閣諸島や沖縄に手を出してきても米軍の協力が得られないと覚悟すべきである。否、そもそも台湾問題は日本と無関係なのではなく、台湾海峡を石油タンカーが自由に航行できなくなれば、エネルギー安全保障上大変なことになってしまう。また、台湾がシナの手に落ちてしまえば、次は尖閣・沖縄となることは火を見るよりも明らかなことである。【続】