保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

自民党総裁選を巡って(3) ~政治指導者に必要なのは「大局観」~

《コロナ下で露呈したのは、世論からかけ離れた政権の認識だ。

 記者会見で首相は、コロナ対策について「明かりは、はっきりと見え始めている」と語った。多くの人の実感とはほど遠い》(8月27日付毎日新聞社説)

 成程、菅義偉首相の発言には疑問もあろう。が、マスコミによって煽られた<世論(せろん)>を基準にして物事を考えるのもまた危うい。

 現下のコロナ禍はマスコミによって作られた所がある。感染者数が増加していることだけを問題にして恐怖心を煽り、活動の自粛も已む無しとするのは頂けない。活動を自粛することによって金銭的にも精神的にも追い込まれている人達は少なくない。当たり前であるが、物事は総合的に見、判断しなければならないのである。

自民党は、菅首相の総裁任期満了に伴う総裁選について、「9月17日告示、29日投開票」という日程で実施することを決めた。首相はすでに再選を目指して出馬する意向を示しており、岸田文雄・前政調会長も立候補を表明した。

(中略)

 岸田氏は記者会見で、「政治の根幹である国民の信頼が崩れている。我が国の民主主義を守るために立候補する」と語った。

 新型コロナウイルス対策などで国民の声が政治に届いていないと指摘するとともに、党役員任期に制限を設けるなど、党のガバナンス強化を図る考えを示した》(8月27日付読売新聞社説)

 新型コロナ問題における<国民の声>とはマスコミによって煽られた「声」である。こんな声を「政治」が受け止めても仕方ない。求められるのは、煽られた「声」を受け止めることではなく、冷静沈着なコロナ対応であろう。

 今の政治指導者は交通整理のお巡りさんでしかない。感染者が爆発すれば国民に活動の自粛を要請し、減少すればそれを解く。が、本来政治指導者が腐心すべきは、コロナ禍であってもいかに経済を回すかである。

 今の政治指導者に欠けているのは「大局観」ではないか。目先のことに拘(こだわ)り、取り巻きの意見に影響され、全体を見た中長期戦略を描けない。だからいつまで経っても暗い隧道(すいどう)を抜け出すことが出来ないし、抜け出せる気もしないのである。

《首相は、9月16日に就任1年を迎える。公約に掲げたデジタル庁発足や携帯電話料金引き下げは前進したが、コロナ対策では十分に指導力を発揮できていない》(同)

 1年掛けての目ぼしい成果がデジタル庁の発足と携帯料金引き下げだけというのではお寒い限りである。

《政権党の党首は首相として国政を担う。党の在り方だけでなく、どんな日本をつくるのかが問われよう。大きなビジョンを掲げ、諸課題に対する具体的な政策を示して活発な論戦を交わしてほしい》(8月27日付京都新聞社説)

 この当たり前のことを指摘しているのが京都新聞だけというのも嘆かわしい。

《喫緊の課題である新型コロナウイルス対策をはじめ、低迷する経済の再生、少子高齢化への対応、米中対立に揺れる外交など、問題は山積している》(同)

《成長戦略や社会保障、外交・安保など待ったなしの懸案が山積している》(8月26日付日本経済新聞社説)

《コロナ対策以外にも、収束後の経済や福祉政策など多くの課題がある》(8月28日付南日本新聞社説)

 目の付け所は各紙違っているが、それはそれ。優先されるべき課題が何かについては議論すれば良い。

 新型コロナだけしか見えていない目は「節穴」でしかない。【了】