保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

政治指導者不在のコロナ禍の悲劇(1) ~異様な宣言発出~

《緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に移行して3週間、懸念されていた新型コロナの感染再拡大が現実のものとなり、政府はきのう、東京都を対象に、今年に入って3度目、通算で4度目となる緊急事態を宣言することを決めた》(7月9日付朝日新聞社説)

 これほど繰り返し<緊急事態>が宣言されれば、<緊急>に慣れっこになってしまって、本当に緊急を要するときに、それが伝わらなくなってしまわないか心配になる。

《政府は当初、東京都も重点措置の延長で対処することを検討していた。しかし、新型コロナウイルスの新規感染者数が1日1000人に迫り、五輪開催に向けて、より強い措置を取らざるを得ないと判断したのだろう》(7月9日付読売新聞社説)

 政府は五輪直前に再び<緊急事態>を宣言することの意味が分かっているのだろうか。緊急事態の最中(さなか)、世界に冠たる競技者を招集し五輪を開催するなどというのは悪い冗談のようにしか思えない。

《医療体制の逼迫(ひっぱく)が危惧される中、五輪を開催することに伴い、世界各国から数万人が来日する。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が「今の状況で(開催は)普通はない」と語ったほどの異例の事態だ》(7月9日付毎日新聞社説)

 が、感染者数しか見ない今の自粛要請は間違っている。

《東京は前回、重点措置から宣言に早めに切り替えた結果、関西で起きたような深刻な流行を免れることができた。しかし、今回も同様の効果が得られる保証はない》(同、朝日社説)

 感染者数が増えれば活動を自粛し感染者数を減らす。が、それでは、自粛を解き活動を再開すれば感染者数は増えまた自粛が必要となり「無限ループ」に陥ってしまうだろう。この「輪」から抜け出すにはどうしたらいいか。それを考えるのが政治家の本来の役割のはずである。が、現下の政治指導者たちは、感染者数が増えればただ活動自粛を要請するだけの「交通整理員」のようになってしまっている。

《専門家会議は感染の再拡大に「強い懸念」を示しており、本来なら十分に感染を抑え込むまで宣言を継続し、対策を呼び掛ける必要があった。にもかかわらず、宣言を解除したことはちぐはぐに映る》(7月9日付東京新聞社説)

 要は定見がないのである。ただ周りの意見に振り回されているだけである。

 京都大学藤井聡教授は、今回の緊急事態宣言を疑問視する。

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 どうして前回、前々回と違い、今回だけ感染拡大の初期段階で緊急事態を宣言したのかが謎なのである。

菅義偉首相は会見で、デルタ株による感染拡大に懸念を示し「東京を起点とする感染拡大は絶対に避けなければならない。先手先手で予防措置を講じることにした」と説明した》(東スポWeb 20210709 0615分)

 どうして今までと違って今回は<先手先手で予防措置を講じることにした>のか。それが説明されなければ、説明したことにならない。【続】