保守論客の独り言

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ナショナル・ルサンチマンが生んだ核廃絶の責務意識(4) ~世間知らずの青臭い科白~

被爆者の悲願だった核兵器禁止条約が発効してから初めての原爆忌である。

 あの日、強烈な熱線や爆風、放射線で町は一瞬にして焼け野原となった。1945年末までに約20万人もの尊い命が奪われた。

 生き残った被爆者たちは放射線による健康被害に苦しみ、症状のない人もいつ病気になるか分からないという不安と闘ってきた。

 その中で自身の過酷な体験を伝え、核兵器の非人道性を訴えてきた被爆者たちの粘り強い努力が実を結んだのが核兵器禁止条約だ。

 前文には「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記されており、今年1月に発効した。

 しかし唯一の戦争被爆国である日本は、米国の「核の傘」に頼り同盟関係を重視する立場から批准していない。

 こうした日本政府の姿勢は被爆者だけでなく「核なき世界」の実現を求める国際世論も失望させている》(8月6日付沖縄タイムス社説)

 どうして<核兵器禁止条約>が<過酷な体験を伝え、核兵器の非人道性を訴えてきた被爆者たちの粘り強い努力が実を結んだ>ものだと言えるのだろうか。<核兵器禁止条約>の加盟国は核保有国ではない。核の必要を感じない謂わば「部外者」が気楽に集まったに過ぎない、などと言えば言い過ぎだろうか。

《今年1月、核兵器の開発や実験、保有、使用を全面的に禁止する核兵器禁止条約が批准した50の国・地域で発効した。核廃絶への歩みを進めると期待する向きもあるが、ことはそう単純ではない。条約に加わらない日本を非難するのも短絡的な見方である。

 米露中英仏をはじめ、核保有国はこの条約に一国も加わっていない。日本だけではなく北大西洋条約機構NATO)加盟国や韓国など、米国の核抑止力(核の傘)を利用する国も同様だ》(8月6日付産經新聞主張)

 産經だけは現実が分かっているのかと思いきや、

《唯一の被爆国として、日本が核兵器廃絶や核軍縮を目指すのは当然のことだ》(同)

などと言っていることからして五十歩百歩だと言うべきであろう。

《現実の世界は楽観を許さない。米ロは2月に新戦略兵器削減条約(新START)の延長で合意する一方で、核兵器の近代化を進めている。中国の核戦力増強には歯止めがかからず、イランや北朝鮮の核開発も懸念材料だ。「核なき世界」は遠い。

流れを変えるために日本がすべきことは、唯一の戦争被爆国として核兵器の恐ろしさを訴え続けることである》(8月5日付日本経済新聞社説)

 <核兵器の恐ろしさを訴え続けること>によって核拡散、核兵器の近代化の<流れ>を変えられると思っているとしたら「お馬鹿さん」と言うしかない。よくこんな世間知らずの若者のような青臭い科白を吐けるものだ。【続】