保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

核燃料サイクルについて(2) ~<高速炉>は1つの試金石~

《いま、国内外にある日本のプルトニウムは、6千発の原爆に相当する46トンにものぼる。その削減が日本の国際公約だ。

 にもかかわらず、新たにプルトニウムを取り出せば、「唯一の戦争被爆国なのに、本当にプルトニウムを減らす気があるのか」と国際社会から批判されよう。「核保有の意図があるのでは」と、あらぬ疑いさえかけられかねない》(5月14日付朝日新聞社説)

 しばしば<国際公約>だと言われるのだけれども、おそらく具体的なものではないのだろう。政治家や官僚などの対外的不規則発言を反対派がそのように称し利用しているだけなのではないか。本当に<国際公約>なのであれば、どうして具体名が出て来ないのか。

 <唯一の戦争被爆国なのに…>の理屈もおかしい。戦争被爆国はプルトニウム保有してはならないのか。むしろ話は逆で、唯一の戦争被爆国だからこそ、日本だけはプルトニウム保有の権利がある、というのなら分からないでもない。いずれにせよ日本が国際社会から批判される謂(い)われはない。

 <核保有>は決してあらぬことではない。成程、日本という狭小国が核武装することは得策ではないだろう。が、保有の可能性まで否定するのは愚かなことである。核保有に踏み切る可能性は有効な外交カードになり得る。このカードを自ら放棄するなどということは外交音痴もいいところである。

《要だった高速増殖炉もんじゅは、再処理で出るプルトニウムの利用促進を探る原型炉だが、実証炉への道筋を作れないまま、16年末、廃炉が決まった。3年過ぎても、次の高速炉をどうするか、具体化は足踏みしたままだ》(5月13日付日本経済新聞社説)

 今ある核の問題は核技術を発展させることによってしか克服できない。<高速炉>は1つの試金石である。片手間に<高速炉>を造ろうするからうまくいかないのであって、国を挙げて本気で<高速炉>完成に導くべきである。そういった中長期的目標をしっかり掲げることで、理系教育も少しは引き締まり、優秀な研究者も育つのではないか。豊かさ病で緩んでいては、日本の将来は危うい。

3年前、日米原子力協定の延長を巡る交渉で、日本のプルトニウム保有が核拡散につながると懸念する声が出た。協定が自動延長になった際にわたしたちは、この猶予期間をサイクル政策見直しの議論にあてるべきだと主張した。しかし、日本政府の「思考停止」は何も変わっていない》(同)

 一体核燃料サイクル政策をどう見直せと言うのか。確かに政府がただ問題を先送りにしているのも問題なのであるが、批判ばかりしていても何も先に進まない。

《世界を見わたせば、原発より再生可能エネルギーの躍進が目立つ。コストが大幅に下がってきたのはもちろん、どの国にとっても太陽光や風力などが「純国産エネルギー」であることが大きい》(同、朝日社説)

 <コストが大幅に下がってきた>というのは嘘臭い。自然条件に左右される再生可能エネルギーに依存すればするほど、「バックアップ電源」が必要となる。設置の環境破壊問題もあれば、耐用年数の問題もある。高コストであっても環境にやさしい<再生可能エネルギー>で行くべきだという主張なら分からなくもないが、コストの大幅減を前面に出すのは眉に唾すべき話であろうと思われる。【了】