保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

菅首相の所信表明演説について(1) ~理念がないのは政治もマスコミも同じ~

10月27日付各紙社説は菅義偉首相の所信表明演説を取り上げている。

《人目を引くキャッチフレーズは避け、実務重視で各論を積み上げていく。それが菅首相の流儀なのだろうが、就任後初めての所信表明演説としては、肩すかしと言うほかない》(朝日新聞

 朝日の言う<肩すかし>とは、本来盛り込むべきだった項目が2つ抜け落ちていたということのようだ。

《首相の説明責任が問われているのに、今回の演説では全く触れられなかったのが、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題である》(同)

 が、この問題は朝日が勝手に<首相の説明責任が問われている>と言っているだけで、所信表明に盛り込むようなものではない。それどころか、政府の足を引っ張ろうとする日本学術会議日本学術会議元副会長・唐木英明「日本学術会議は民営化して出直せ」参照)など政府の組織なのであるから解散すれば良いだけの話である。

《語られなかったもう一つのテーマが、来年1月に発効することになった核兵器禁止条約への評価である…唯一の戦争被爆国の首相が、この歴史的な節目に際し、どのような見解を示すのかは、国際社会にとっても関心事だろう》(同)

 自分の関心事が国際社会の関心事でもあるなどと思うのは大間違いである。核保有国、特に核倶楽部と称される5カ国(英米仏露中)が無視するような条約をつくっても「現実政治」の世界では無意味である。

《全体の政策を貫く基本理念や国造りのビジョンを示さなかった》(毎日新聞

 私もそう思う。が、それは菅首相に限ったことではない。他の政治家もマスコミも<全体の政策を貫く基本理念や国造りのビジョン>があるとは思えない。憲法問題も然り、対米従属問題も然り、戦後体制問題も然りである。

 菅首相は言う。

私が目指す社会像は、「自助・共助・公助」そして「絆」です。

自分でできることは、まず、自分でやってみる。

そして、家族、地域で互いに助け合う。

そのうえで、政府がセーフティネットでお守りする。

 ともすれば、社会に凭(もた)れ掛かりがちな「甘え」を絶ち、自らが主体的に生きる。が、独力ではどうにもならないこともある。足らぬところを共に助け合い、さらに社会が安全網を張り扶助する。それが「自助・共助・公助」というものである。国民が主体性を失っては国は衰退せざるを得ないということである。

《首相が考える自助・共助・公助のバランスに照らすと、今後の社会保障格差是正のあり方はどうなるのか。それこそが国民の知りたいところではないか》(朝日新聞

 そんな具体的詳細は、所信表明で述べるようなものではないし、朝日社説子が知りたいことであっても国民が知りたいようなものではないだろう。【続】