保守論客の独り言

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出入国管理法改正案廃案について(3) ~問題は政治屋とナルシストの偽善~

《ある自民幹部は「衆院選を控えて採決を強行すれば、選挙は負ける」と話す。

 74日投開票の都議選への影響もあった。公明党は都議選を国政選挙並みに重要視する。参院法務委は公明議員が委員長を務めるため、「公明から採決強行はやめるべきだと首相はかなり言われている」(首相周辺)との事情もあった。菅義偉首相も周囲に「採決するかどうか迷っている。公明との関係がある」と漏らしていたという》(朝日新聞デジタル2021年5月18日21時25分)

 国益よりも自分たちの議席を優先させる政治屋たちと、彼らから得られる政治の裏情報をいかに手に入れるかが腕の見せ所であるかのように勘違いしてきたマスコミが日本を腐らせているのだ。

《政府が目指したのは、強制退去処分となった外国人の収容が長期化している問題の解消だった。年間3千~4千人ほどが送還に応じず、収容期間が6カ月以上の人は2019年末時点で462人に上る。健康上の理由などから収容が解かれる仮放免の申請者によるハンガーストライキや、仮放免中の逃亡といった問題も起きている。政府は、手続き中は一律に送還が停止される難民申請が繰り返し行われていることが主な原因とみていた。

 改正案には、この送還停止規定の適用を制限し、速やかな退去に応じれば再入国の拒否期間を短縮するなどの内容が盛り込まれた。こうして早期の出国を促す一方、施設外での生活を可能にする「監理措置」も導入し、送還まで原則収容される現行制度から転換。「様々な方策をパッケージにした」(上川陽子法相)としていた》(同)

 朝日にしては珍しく公平な記述である。要は、それなりに配慮が付された法案だったということである。

《ただ、収容の可否を裁判所ではなく入管当局が判断するのは現行と変わらず、収容期間にも上限が設けられなかったことに批判が集中。「国際的な人権水準に達していない」などと国連の専門家や日本弁護士連合会、外国人支援団体などから指摘が相次いだ》(同)

 「国際的な人権水準に達していない」などといって廃案に追い込むことが果たして当事者のためになるのだろうか。たとえ充分とは言えなくとも、一歩でも二歩でも前進させるという政治的「妥協」があっても良いではないか。反対者たちには、そういう柔軟性が皆目見えてこない。

《日本の難民認定率が諸外国と比べて低いことも改正反対の理由の一つとなった。昨年までの5年間に限っても、約4千~2万人の申請者に対して認定数は50人に満たない状況で、改正されれば難民と認められるべき人が送還される恐れが高まる、と指摘された》(同)

 諸外国とは政治的事情も違えば歴史的経緯も異なる。にもかかわらず、<日本の難民認定率が諸外国と比べて低い>などと右へ倣え式の言い方をされても困る。難民を受け入れるか否かを博愛主義的に考えることは、ナルシストの「偽善」にしかならないのではないか。【了】