保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

9月入学制移行は短絡的(1) ~「9月入学」に向け動き出した?~

またぞろ戦後日本人の「奴隷根性」が鎌首を擡(もた)げてきた。

《政府は30日、新型コロナウイルス感染拡大による休校長期化を受け、「9月入学」の実現に向け具体的な検討作業に入った。

来年秋からの制度化を想定。杉田和博官房副長官が関係府省の事務次官首相官邸に呼び、導入に向けた論点整理を急ぐよう指示した。大型連休明けから検討を本格化させる》(JIJI.COM 5/1(金) 7:07配信)

 以前から「9月入学」を求める声はあったが、それを今また、この混乱に乗じて持ち出すとは。

 小池百合子東京都知事は次のように述べた。

「以前から“新学年9月スタート論者”の1人だ。4月スタートで桜と一緒じゃないと雰囲気が出ないとか、会計年度の問題があるとか言うが、いま教育は世界の中での競争でもあるので、国際スタンダードに合わせていくことにもなる。これによる混乱は生じると思うが、一方で、いま混乱は生じている。こういう時にしか社会って変わらないんじゃないかとも思うし、その一つとして、ありではないか」(ABEMA TIMES:2020.04.28 19:42)

 社会が混乱している時にしか社会は変わらないなどと言うのは明らかに「危険思想」である。つまり、裏返せば、正常時には賛同が得られないことを混乱に乗じて変えてしまえと言っているわけである。

 正常時に賛同が得られないのは、そこに何らかの障壁があるからである。その障壁を取り除かずに変えてしまえば、いずれそれが問題化することになる。問題が顕在化すれば、また元に戻せばよいなどと安易に考えているとすれば大間違いである。

 国際標準に合わせる以外に、「9月入学」にどのような意味があるのかを説明して欲しいものだし、“新学年9月スタート論者”だと言うのなら、その実現に向けてどういう活動を行ってきたというのか。小池発言には「論」もなければ「信念」も感じられない。

新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の延長期間が5月末までで終了すれば、検討結果を踏まえ、安倍晋三首相が6月上旬にも方向性を打ち出すことも検討している。

 文部科学省は4月上旬に首相に検討を進めることについて内諾を得ていた。政府関係者によると、首相は9月入学実現に強い意欲を示しているという》(JIJI.COM、同)

 これを産經主張が痛烈に批判する。

《入試改革も満足にできぬ文科省に任せれば混乱に拍車がかかるだけだ》(5月1日付産經新聞主張)

 が、このような批判は産經以外に見られない。他紙は、現段階では利点もあれば問題点もあるぐらいの反応であるが、本気で「9月入学」を行おうとすれば余りにも時間が乏しく、議論もそこそこに「えいや」でやってしまうなどということにもなりかねない。【続】