保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

GSOMIAについて(5) ~韓国中央日報の冷静な分析~

《韓日の軍事情報包括保護協定GSOMIA)の終了期限(23日0時)を目前にして韓国政府が猶予決定を下した。韓日対立局面の中、政府が8月に出した終了決定を自ら保留した。「終了通知効力停止」という表現を使用しながら、いつでもGSOMIAを終了させることができるという前提を付けたが、破局はひとまず避けたということだ。GSOMIA終了による韓米同盟の深刻な亀裂と韓日米安保協力への支障を防ぎ、問題解決のための時間を持つことになった点では幸いだ》(中央日報日本語版2019.11.23 10:16

 冷静な筆致である。特に、時間的猶予が持てたことを幸いとしているのは、問題解決に向けて前向きであることの表れであろう。

《3日前に文在寅ムン・ジェイン)大統領が国民を相手に「GSOMIA終了問題は日本が原因を提供した。軍事情報共有は矛盾する」と述べたが、一歩後退した。それだけGSOMIA終了がもたらす影響に対して政府の負担が大きかったのだろう。その背景にはGSOMIAを韓日米安保協力の必要条件と見る米国の強力な圧力があったとみられる》(同)

 確かに、3日前の大統領の発言を翻(ひるがえ)すのであるから、米国から余程の圧力があったと考えざるを得ない。

《この時点で過去数カ月間の混乱を冷静に振り返り、教訓にしなければいけない。8月に実務部処の慎重論と専門家の強い懸念にもかかわらず、GSOMIA破棄を決めた政府が今になって一歩引き下がる姿になった。政府の強硬姿勢で何を得たのかという声が出てくるしかない。日本の不当な輸出規制に対抗する措置だとしても、現実はGSOMIAを対応カードとして取り出した政府の意図通りにはならなかった。強硬一辺倒の未熟な対応策が表した限界だ》(同)

 何を誤ったのかを冷静に反省し、そこから何某(なにがし)かの<教訓>を導き出せれれば救われる。否、親北朝鮮政権下でこのような耳の痛い指摘が出来るマスコミがあることでまだしも救われていると言うべきか。

《韓国がこれまで支払った費用は決して少なくなかった。特に韓米同盟の信頼に傷を残したのはあまりにも大きい。韓米防衛費分担交渉など目の前の難題を、今回のGSOMIA波紋を教訓にして賢く解決する必要がある。GSOMIA破棄をめぐる賛否で分裂した国民世論をまとめるのも課題だ》(同)

 今回の「独り相撲」を収めるのは難しい。GSOMIA継続は北朝鮮を敵とするということの表明であり、韓国が日米側に付くということである。ただ継続したのではなく、一旦破棄するとしたものを反故にするのであるから尚更(なおさら)である。南北統一は一歩も二歩も後退したと考えざるを得ない。

 また、これほど大騒ぎしても日本からは何の譲歩も得られなかった。このような前例を作ってしまったことが今後の日韓交渉に与える影響は小さくないだろう。

 最大の問題は韓国民の気持ちをどう静めるかである。今回の一件が単なる「空騒ぎ」であったとなると、国民の批判が文在寅大統領に向くであろうことは避けられないのではないか。【了】