保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

政治家の失言について(1) ~表層的言葉狩りはやめるべきだ~

神戸新聞がこの1年で問題となった国会議員や官僚の言葉として次のような一覧を掲載している。

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          (2019/7/5 15:00神戸新聞NEXT)

 曰く、

与野党を問わず、国会議員の不用意な失言や暴言が目立っている。背景として、有識者らは「断言型」の演説の流行や、インターネットの会員制交流サイト(SNS)の影響などを指摘。参院選が4日公示され、各地で論戦が繰り広げられる中、「言葉」から政治家の資質を見極める必要性も説く》(同)

 2つ問題がある。1つは、一覧に掲げられた「失言」は果たして失言なのかということ、もう1つは、一覧に掲げられていない失言もあるはずなのに、一覧に載せるかどうかをどのような基準で判断したのかということである。

 例えば、丸山穂高議員の場合、北方領土を取り戻すには戦争しかないのではないかと交流訪問団の団長に疑問を投げかけただけで、これがどうして「失言」となるのか私には皆目分からない。

 杉田水脈議員の月刊誌への寄稿にしても、「LGBTカップルは子どもをつくらない、つまり(マルクス用語で言えば)『生産性』がない」ということであり、文脈を無視して「生産性」という言葉を「失言」と決め付けるのは単細胞である。

 麻生太郎・副総理兼財務相の発言も、これを「失言」と言うのは少し単純に過ぎるように思われる。少子高齢化は、高齢化よりも少子化の方が問題だという趣旨の発言である。必ずしも子供を作ろうとしない若者や、子供を産もうとしない女性が悪いと言っているわけではない。ではどうすれば良いのかに関する提案がないのが問題だとは言えようが、<子供を産まない方が問題だ>、つまり少子化が問題だとの指摘は間違っているというわけではなく、「失言」として蓋をするのではなく、もう少し突っ込んだ議論につなげることの方がはるかに建設的ではないかと思われる。

 一方で取り上げられていない「失言」もある。辻元清美立憲民主党国会対策委員長が、国後島を訪問した丸山穂高議員について

「普通の海外渡航とちょっと違う。ですから向こうが…あ、海外じゃない?普通の…え〜失礼しました」

と、国後島が日本領でないかのように口を滑らせてしまったのも「失言」であろう。

信州大学都築勉名誉教授(政治学)は、政治家の言葉が変質したのは、2001年に就任した小泉純一郎元首相が「自民党をぶっ壊す」と訴えた時期からだとする。

 党内や他党を説き伏せるより、有権者の注目を集める発言に軸足が移り、分かりやすい言葉で単純化した演説が人気を集めるように。さらに衆院小選挙区制導入などで派閥が弱体化し、“抑え”がなくなった自民の若手議員がSNSなどで奔放に主張し始めた》(同)

 政治家の失言自体が増えたのか、失言を批判材料として取り上げる下衆(げす)いマスコミが増えたのか。私には政治家の質もマスコミの質もどちらも低下してしまったように見えるのだが…【続】