保守論客の独り言

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日本固有の領土と言えなくなった北方領土(5) ~譲歩ばかりの安倍外交では不安~

鳩山内閣は日本の国連加盟やシベリア抑留者の送還でソ連の協力を得るため、歯舞、色丹の2島で妥協した。それが、56年10月に署名した共同宣言だった》(毎日新聞2019年2月8日 東京朝刊)

 毎日記者は日本に厳しくロシアに甘い。そのことは日ソ不可侵条約を一方的に破棄して北方領土にまで攻め込み占領し、多くの日本人を不法にシベリア抑留し続けたソ連の「協力を得るため」などと書けることからも分かる。

《ロシアとの関係構築は、地域の安定につながるだろう。米国との同盟を維持しつつ、外交の選択肢も増える。強大化する中国へのけん制になる。液化天然ガス(LNG)を豊富に産出するロシアとの関係強化はエネルギー安全保障に資する。

 一方で、クリミア併合で関係を険悪化させる欧米は日本の外交姿勢に疑念を抱くだろう。冷戦で疲弊しながら復活したロシアは蓄えた国力を誇示しようとしている。日本が在日米軍を展開させないと確約するなら、安全保障に関わる主権を放棄したと映る。領土問題での妥協は国際的な威信を傷つけるかもしれない》(同)

 仮に2島が還ってきて、平和条約が締結され、経済交流が盛んになったとしても、ロシアとの関係が改善される見込みは薄いと思う。まして日露が手を組んで中国を牽制するなど非現実的に過ぎる。

 また、ロシアの天然ガスが手に入ればエネルギー安全保障に資するなどと前のめりになれば、足元をすくわれるだけである。むしろロシアにエネルギーを依存すればそれだけロシアに生殺与奪の権を与えることにもなりかねない。

 <復活したロシア>という言い方もおかしい。ロシアのGDPは日本の3分の1以下しかない。ただ軍事力を盾に偉そうにしているだけである。

北方四島について日本はソ連が第二次大戦末期に、中立条約に違反して侵攻し占拠したという立場だ。だが、ロシアは大戦の結果としてソ連領となり、日本が認めなければ領土問題の解決はないと主張する》(同)

 <立場>ではない。国際法違反によって不当に占拠されたことを非難しているだけである。一方、ロシアは国際法など関係なく、奪ったもの勝ちだと言っているわけで、日露の主張を同等に扱えるわけがない。記者は一体どこの国の人間なのだろうか。

北方四島がロシアによって不法に占拠されている。これは、誰一人否定しがたい客観的事実に他ならない。にもかかわらず、その言葉を北方領土返還全国大会のスローガンから外した。これは「第2次大戦の結果として四島がロシアの主権下に移った」とのロシア側の主張を認めるに等しいだろう。

 おそらく安倍政権はロシアを刺激して平和交渉を停滞させることを危惧しているのだろう。交渉のABC、とりわけロシア式思考や行動様式に無知と評さざるを得ない。ロシア人は、席を憤然と蹴って交渉会場を後にする毅然(きぜん)とした相手との間に初めて真剣な話し合いを行う。

「己とプーチン氏の間で必ずや平和条約を結ぶ」と交渉のデッドライン(期限)を設け、実際次から次へと一方的な譲歩を行う。そのような人物とは決して真剣に交渉しようとは思わないのがロシア外交の本質である》(木村汎「首相は正気か、北方四島『固有の領土』となぜ言えないのか」:iRONNA 2019/02/07)

 安倍晋三首相はこれまでずっと外交交渉で譲歩してきた。米国議会演説や「戦後70年談話」における歴史認識もそうだし、日韓慰安婦合意もそうである。今回の北方領土問題も譲って終わりということにならないか心配である。【了】