保守論客の独り言

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明石市長の「火付けてこい!」発言について(2) ~「欲求不満-攻撃仮説」~

心理学に「欲求不満」が募ると「攻撃性」が高まるという「欲求不満-攻撃仮説」(frustration-aggression theory)なるものがある。泉房穂明石市長もこの理論に当て嵌まるのではないだろうか。

 東大卒で弁護士資格を持つ頭脳明晰な泉市長には、どうして7年もあったにもかかわらず、たった一軒の立ち退き交渉を終えられないのか分からない。当然、交渉が停滞してしまっているのは自分にも問題があるということに気が付かない。

 職員をここまで罵倒する権利が市長にあるのなら、否、それほどこの立ち退きが重要案件であるなら、進捗状況を逐次報告させ指示を出す義務を市長自ら7年間も怠ってきたということにもなる。

 一方で、今回の報道は一部を切り取ったもので公平性を欠くという指摘もある。実は今回の暴言には後段がある。

市長 ずっと座り込んで頭下げて1週間以内に取ってこい。おまえら全員で通って取ってこい、判子。おまえら自腹切って判子押してもらえ。とにかく判子ついてもらってこい。

とにかく今月中に頭下げて説得して判付いてもうてください。あと1軒だけです。ここは人が死にました。角で女性が死んで、それがきっかけでこの事業は進んでいます。そんな中でぜひご協力いただきたい、と。

ほんまに何のためにやっとる工事や、安全対策でしょ。あっこの角で人が巻き込まれて死んだわけでしょ。だから拡幅するんでしょ。

(担当者)2人が行って難しければ、私が行きますけど。私が行って土下座でもしますわ。市民の安全のためやろ、腹立ってんのわ。何を仕事してんねん。しんどい仕事やから尊い、相手がややこしいから美しいんですよ。

後回しにしてどないすんねん、一番しんどい仕事からせえよ。市民の安全のためやないか。言いたいのはそれや。そのためにしんどい仕事するんや、役所は。

「欲求不満-攻撃仮説」では、「攻撃行動が表出されれば欲求阻止による緊張状態は緩和され、攻撃性は低下する」とされる。感情的になった市長も暴言を吐くことで理性を取り戻したということなのであろう。

 神戸新聞の藤井信哉記者は言う。

「センセーショナルな部分だけでなく、何を言いたかったのか、周辺も含めた取材をしないといけない。発言自体は許されないことだと思うが、言葉尻だけを切り取って伝えると、報道としての公平さを欠くというか、市民の方の判断材料にならないと思った。他社がどういうデータを入手したのかはわからないし、短いものしか入手できなかった可能性もあるが、私たちは幸い全体像がわかるものを入手できたので、きちんと伝えようと思った」(Abema TIMES 1/30(水) 15:30配信)

 議論を偏ったものにするために、一部分だけを切り取って報道するのは厳に慎むべきであることは言うまでもない。が、

《泉市長は29日午前、市役所で記者会見を開き、「自分自身の発言は許されず、深く反省している」として暴言を認め、謝罪した。

 自身を処分する意向を示したが、辞職は否定。4月の同市長選で3選を目指し立候補表明していることについて「有権者の判断を仰ぎたい」とし、改めて立候補の意向を示した》(神戸新聞NEXT 2019/1/29 10:50)

 自分では発言は許されると思うが、有権者はどう判断されるのかを問いたいというのなら分かる。が、自分は発言は許されないと述べておきながら、有権者の判断を仰ぐのは矛盾している。何よりもし泉市長が再選されれば、暴言は許されるかのような誤解を生みかねない。

 市長はただ頭が良いだけでは務まらない。職員と共に一丸となっていかに成果を挙げるのかということを忘れてはならない。言うまでもなく、罵倒して職員を動かそうなどと考えるのは愚かである。

 そもそも人心掌握力があれば今回のような問題は起こらなかったのではないか。理性を失うほど激怒し罵声を浴びせかけるのは自らの能力のなさの表れである。【了】

 

追伸: 泉市長は本日(2月1日)辞職を表明した。潔(いさぎよ)しとしたい。