保守論客の独り言

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丸山穂高議員を「陶片追放」しようとする産經「浪速風」の非常識

ついに産経新聞までもが<市民感覚>を神の声のように見るようになってしまった。

古代ギリシャテミストクレスといえばペルシャ艦隊を破った軍人、政治家だが、あくの強い人間でもあったらしい。ヘロドトス「歴史」によると賄賂を使い私腹も肥やした。危険な人物を市民が陶片に書いて投票する、陶片追放によって追われてしまう。市民感覚を反映させる制度である》(68日付産經新聞「浪速風」)

 <陶片追放>などというものがいかにおかしな制度であったのかを毎日新聞はしっかり伝えている。

《古代アテネのアリステイデスは高徳で知られた政治家・軍人だ。ある時、街で行きずりの男に陶器の破片を渡された。男は「字が書けないので、これにアリステイデスと書いてくれ」という▲追放したい政治家の名前を陶片に書いて投票する「陶片追放」である。驚いたアリステイデスは「この人は何かあなたに悪いことをしたのか」と尋ねると男が言った。「いや、会ったこともないが、どこへ行っても『正義の人』と聞くんで、腹が立ってならないんだ」▲アリステイデスは黙って自分の名前を書いて男に渡したと「プルタルコス英雄伝」にある。独裁者の出現を阻むという陶片追放だが、弊害がはなはだしくなったのは当然だろう》(201668日付毎日新聞「余録」)

 何をとち狂ったのか知らないが、浪速風子は丸山議員を執拗に攻撃する。

北方領土を戦争で取り戻す是非に乱暴に触れた丸山穂高議員に対する糾弾決議が、衆院本会議で可決された。現代版陶片追放といえる…酒に酔ったうえでの暴言であり、国益を損ねた。性的な発言もあった。

 ▼国会は人民法廷ではない、などとする弁明書を丸山議員は提出していた。思い違いもはなはだしい。全会一致での決議は国民の常識感覚が反映されたものである》(同、産経新聞「浪速風」)

 浪速風子には「生者」しか見えていないのだろう。今生きている人たちの共通意見が「常識」だと思っている。それなら左寄り新聞と変わらない。が、common senseには、今を生きる者たちの「横の共通感覚」だけではなく、過去を生きてきた者たちの「縦の共通感覚」というものも含むべき概念であろう。だから<全会一致での決議は国民の常識感覚>などという話は薄っぺらな「常識」でしかない。

 そもそも国会は一酔っ払い議員を糾弾するような場ではない。私に言わせれば、全会一致で一国会議員を糾弾することの方が余程「非常識」である。この「非常識」を<国民の常識感覚>などという浪速風子も「非常識」そのものである。

 その人物が国会議員に相応しいか否かは選挙に問うのが「常識」というものである。酒乱の破廉恥漢に国会議員が務まるのかどうかは有権者が決めればよい。国会が、外交、経済、社会保障といった重大な案件をそっちのけで各議員の人物評定などやり出せばそれこそ泥沼に陥ってしまうに違いない。