保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

これでは北方領土を取り返せない(2) ~戦勝国の走狗?~

現代における「戦争」とは独り「熱戦」だけではない。北方領土を奪還すべく「情報戦」を仕掛けることもれっきとした「戦争」である。

 日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、満洲、千島に攻め込み傍若無人の限りを尽くし、戦後、日本人捕虜をシベリアに抑留し強制労働させた大戦犯国に面と向かって物が言えない意気地なし、それが今の哀れな日本の姿である。

《今や意思を押し付けるために、他国に攻め込むことは犯罪であり、「領土を取り返すために『戦争』」と国会議員の口からでること自体、ありえないことなのだ》(伊藤俊幸「国会議員のあまりに無知な発言」:5月17日付産經新聞「正論」)

 <意思を押し付けるために、他国に攻め込むことは犯罪>だと言うのなら、停戦後北方領土に攻め込んだソ連は間違いなく犯罪国家である。このように断定することを避け、ただ丸山議員だけを批判するのは、ひょっとして伊藤氏は軸足がロシアにあるのではないか。

 戦争で奪い取ったものは返さないというロシアから北方領土を取り返そうとするのなら「戦争」に討って出るしかないというのは理の当然であろうと思われるけれども、「平和憲法」に呪縛された戦後日本人が「戦争」という言葉を耳にしただけで拒否反応を起こしてしまうのは戦勝国の思う壺である。戦争という言葉をこれほど忌み嫌うことの方が私に言わせれば<有り得ないことなのだ>。

《第1次安倍晋三政権発足時、国際的に「歴史修正主義者(リビジョニスト)」と安倍首相は捉えられ、オバマ米大統領にも当初冷遇されたことを覚えておられるだろうか。

 これは日本国内向けの「戦後レジームからの脱却」との発言が、国際社会からは日本は「今度は国際連合からも脱退か」と誤解されたからだ。当時筆者は、統合幕僚学校長として英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)で講演した際、外国の研究者から多くの質問を受けたことを思い出す》(同)

 ということは、日本は戦勝国が嵌(は)めた「歴史の箍(たが)」を嵌め続けなければならないということなのか。大東亜・太平洋戦争は日本が侵略欲をたくましくしたことによって起こったものであって悪いのはすべて日本であった、としてこれからも頭を下げ続けなければならないのか。

《「国際連合」は、第二次世界大戦を防げなかった国際連盟の反省から「国際平和と安全の維持」を目的として作られた組織だ》(同)

などという話も噴飯物である。「国際連合」などとさも中立的組織のように思っているのは日本ぐらいだろう。実態は日本が戦った「連合国」(United Nations)であり、日本はUN憲章上「敵国」である。

 また、UNは<「国際平和と安全の維持」を目的として作られた>などというのは「建前」だけの話で、実際は第2次大戦後の世界を戦勝国が牛耳るために創られたのがUNである。実際、第2次大戦後も様々な戦争が起こり、各地に紛争の火種をばらまいて、マッチポンプよろしく武器を売り大儲けしてきたのはUN常任理事国P5であった。

 伊藤氏のこのような論文を「正論」として掲載した産經新聞もどうかしている。【了】