保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

消費増税対策について(1)~アクセルとブレーキを同時に踏む愚~

《年末の政府予算編成・税制改正作業で、2019年10月に予定する消費税率引き上げへの対応策が焦点になっている。安倍晋三首相は20日の経済財政諮問会議で、19年度予算案に十分な消費増税対策を盛り込むよう指示した》(11月23日付日本経済新聞社説)

 今後膨らんでいく社会保障費を賄うための消費増税ではなかったのか。消費増税による景気の落ち込みを恐れてあれこれ対策を施さねばならないようでは結局増収とはならず、すぐにまた増税が必要になることは目に見えている。

 本来必要であるのは増税ではなく増収である。これまで増税を延期する際にはこのように言っていたにもかかわらず、今回は「増税先にありき」のような話になってしまっている。一体安倍首相はどこを向いて政治を行っているのであろうか。財務省なのかIMF国際通貨基金)なのか国際世論なのか。

 増税するというのなら、軽減税率も含め税制を複雑にするようなことはやめるべきであり、むやみに公務員の仕事を増やし、せっかくの税収が浪費されてしまうような対策は打つべきではない。

 増税によって消費が落ち込まないようにするには、賃金が上がってこないといけない。本来人手不足によって賃金に上昇圧力が掛かるのに、安倍政権は人手不足を解消するために外国人労働者受け入れようとしている。結果、賃金は上昇せず、消費は増税の影響をもろに受けることになってしまうだろう。

《消費増税対策も乱立気味だ。政府は、10月以降にキャッシュレス決済で買い物した人に期間限定でポイントを還元する案を検討している。欧米や中国などに比べ遅れているキャッシュレス化を推進する政策だという。

さらにクレジットカードを持たない高齢者や低所得者に不公平との声が出て、プレミアム付き商品券を発行する案も浮上している。これではキャッシュレス化を推進する効果は薄れてしまう》(同)

 こんなちぐはぐなことをしていてはうまくいくはずがない。最近の安倍政権は何を焦っているのか知らないが、「生煮え」の話が多すぎる。消費増税を奇貨としてキャッシュレス化を推し進めるなどという一石二鳥のようなうまい話はただの思い付き以上のものではなく、それにはどのような問題があり、それにどう対処すべきかといった話にまで議論が踏み込めていない。

《消費増税をしても、その対策と称してどんどん財政支出を増やせば、増税の意味はなくなる。消費税の増収分は、増加を続ける社会保障費と財政健全化に充てるべきだ。消費増税対策に名を借りたバラマキになってはならない》(同)

 <消費税の増収分は、増加を続ける社会保障費と財政健全化に充てるべきだ>というのはその通りであろう。が、何も対策を打たなければ、これまでの消費増税と同様に景気は冷え込んでしまいかねない。

 こんな複雑な対策が必要な消費増税はやはりやめるべきではないか。アクセルとブレーキを同時に踏むようなことはやめた方がよい。