保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

消費増税対策について(2)~日本経済の脆弱さにこそ目を向けるべき~

《対策の柱と位置付けるポイント還元制度を巡り、安倍晋三首相が還元率を大幅拡大する方針を示した…

 中小店舗で現金でなくクレジットカードなどで払った客を対象にするもので、還元率を当初予定していた2%から一気に5%にする》(11月27日付毎日新聞社説)

 社説子はこれを<常軌を逸した大盤振る舞い>として批判する。<常軌を逸した>とは尋常ではない。2%なら妥当だが5%は常軌を逸していると言うのもまた<常軌を逸した>言葉の濫用だと思われる。

 が、対策が<大盤振る舞い>の様相を呈してきたことは間違いない。

《対策には、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行や公共事業の実施といった歳出拡大のメニューが並ぶ。来年の参院選目当てと受け止められても仕方がない》(同)

 さて、社説子は<ポイント還元制度>には2つの点で問題があると言う。

《まず増税の目的を薄めてしまう。

 還元率5%なら消費税率は実質5%と減税になる。増税の本来の目的は、負担の先送りに歯止めをかけることである。目先の景気に使えば、それだけ先送りされる分が増える》(同)

 <負担の先送りに歯止めをかけること>が<増税の本来の目的>ではない。少子高齢化に伴って増加する社会保障費を賄うためには消費増税やむなしということである。当たり前だが、対策と称して税金を投入すればするほど、社会保障に充てるお金が減ってしまう。税収が足りなくなりさらなる増税が必要となる「悪循環」に陥ってしまう。

 増大する社会保障費を賄うためには消費増税を行わねばならない。が、増税すれば景気が落ち込みかねないので景気対策が必要である。が、景気対策を行えば社会保障に回せるお金が不足しさらなる増税が必要となる…

景気対策としても疑問が多い。

 ポイント還元による消費喚起は、将来の需要の先食いである。還元率を拡大すると、その分だけ還元終了後の消費落ち込みも大きくなる。

 還元期間は東京五輪までの9カ月間とするという。終了後の消費落ち込みが、五輪後に懸念される景気停滞と重なる恐れがある。悪化を増幅させると、増税前後の景気をならすという景気対策の趣旨に反する》(同)

 <増税前後の景気をならすという景気対策の趣旨>からすれば、五輪前の景気対策はむしろ無い方がよいということになりかねない。否、<趣旨>からすればそういうことだろう。

 が、景気をこのように人工的に弄(もてあそ)ぶべきではないのではないか。否、そもそも景気をこのような対策云々で制御できると考えているところに横柄さがあるというか軽薄さがある。

 消費税を8%から10%に上げるだけでこれほど対策を打たなければならないような日本経済の脆弱(ぜいじゃく)さこそが問題なのである。その根本を見据えることなく姑息な対策に終始していることが最大の問題なのではないか。【了】