保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

GDP連続減について(2) ~日経社説も変~

《政府は追加対策となる第2次補正予算案を検討している。経済成長の悪化を受け、補正の中に規模の大小を問わず企業の急激な経営悪化を防ぐための施策を確実に盛り込むべきだ。

 具体的には政府系金融機関を通じた事実上の政府保証による融資枠の大胆な拡充策を直ちに実現すべきだ。同時に、金融機能強化法の改正などによる金融機関への支援強化も実行してほしい。すでに貸し渋りは各地で起きている。貸し手側の経営不安を取り除き、資金がスムーズに流れる環境を早急に再整備する必要がある》(5月19日付東京新聞社説)

 さらに次の指摘も重要である。

《産業界全体への公的な支援を実施する際、必要なのは政府による国民への丁寧な説明だ。膨大な内部留保保有する大企業や、かつて公的資金注入で危機を脱した銀行への支援には必ず強い批判が起きる。

 大企業の危機は中小へと波及する可能性が極めて高く、金融機関の経営不安は国内全体の資金不足に直結する。この現実を、安倍晋三首相が自らの言葉で説明しなければ国民は納得しないはずだ》(同)

 一方、読売社説はまたまたおかしなことを言う。

《最大のポイントは、GDPの5割以上を占める個人消費の動向だ。先行き不安による買い控えが長引けば、デフレに逆戻りする恐れがある。雇用と賃金を守り、消費マインドのさらなる悪化を避けなければならない》(5月19日付読売新聞社説)

 今は<デフレ>がどうのこうのというような状況にない。読売社説子は庶民とは住んでいる次元が異なっているのであろう。コロナがどのように進展するのかによって話はがらっと変わってくる。そんなときに、<買い控え>だの<消費マインド>だのといった話を持ち出すのはやはりおかしい。

 <雇用と賃金を守>るというのも言うほど簡単ではない。たとえコロナ禍が収束しても負った深手は簡単には癒(い)えない。当分はコロナと共存しなければならないとすれば、尚更(なおさら)である。

 変なのは読売社説だけでもない。

《米欧などと異なり、日本の成長率は昨年10~12月期(年率7.3%減)からマイナスに転じていた。強力な金融緩和を軸とした「アベノミクス」にもかかわらず、人口減や高齢化の逆風を生産性の向上で補いきれていない。コロナ禍が直撃したのは、安定した成長基盤がまだ整わないうちだった。

おのずと海外に比べコロナ後の「V字回復」は期待しづらい》(5月18日付日本経済新聞社説)

 とても経済紙とは思えない分析である。「アベノミクス」が奏功したのは第2安倍内閣が発足した当初のことである。最近は、金融緩和だけではどうにもならない停滞状態が続いていたにもかかわらず、消費増税を行ったために経済にブレーキが掛かってしまったのであって、<安定した成長基盤>がまだ整っていなかったなどというような話では全くない。

 また、確かに「V字回復」という言葉が思わせぶりに使われ過ぎているように思われるし、実際そんな簡単な話ではないとは思われるけれども、だからと言って<「V字回復」は期待しづらい>などとただ開き直られても困るのである。【続】