保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

日露首脳の領土交渉について(2)~4島返還にこだわる愚~

プーチン氏が、2島の主権の所在が交渉の対象になると述べているのは、到底容認できない。ロシアは、日本固有の領土を不法占拠している。政府は今後の交渉で、安易に譲歩してはなるまい。

 択捉島国後島を含む4島の帰属問題を解決し、平和条約を締結する。政府はこの原則を堅持すべきである。共同宣言を出発点に、長年主張してきた4島返還の展望を描かねばならない》(11月16日付読売新聞社説)

 このような頑(かたく)なな主張を行うのは、読売新聞が米国の意向を代弁しているからであろうと思われる。米国は一枚岩ではない。トランプ政権は勝手な政策を次々に打ち出してはいるが、根底には従来の戦略を踏襲する流れがある。つまり、米国の意向を無視して今回の交渉を進めるわけにはいかないということである。

 場合によってトランプ氏は今回の交渉は日露で勝手にやってくれればよいという立場に立つかもしれないが、北方領土問題が一定の解決を見、日露が接近することを米国が基本的に快く思わないであろうことはこれまでの歴史を見れば明らかであろう。

《対米関係が悪化しているロシアが、日米同盟に制約を加えようとする可能性がある。返還する島に、日米安全保障条約を適用しないように求めるといった懸念だ。日本の安全保障を損ねる不当な要求は、拒まねばならない》(同)

というような話も、日本の事情というよりも、むしろ米国側の事情によるものである。

《条約を結ぶ際に、「2島返還、2島継続交渉」といったあいまいな決着はありえない。国境を最終画定させない「平和条約」は火種を先送りするものであり、両国と地域の長期的和平をめざす本来の目的にそぐわない》(11月16日付朝日新聞社説)

 有り得なくもないが、一般的には有り得ないと考えるべきであろう。だから安倍首相も日本の世論を抑えるために「2島先行」の含みをもたせているのではないかと思われる。

《妥協の道を開くには、現実を見すえた一定の柔軟さは求められるだろう。しかし4島の要求は、国会も繰り返し決議してきた。19世紀に帝政ロシアとの平和的な交渉で、日本領だと認められたという歴史を主張の基盤としてきた。

 その方針を変えるとすれば、なぜか。国民が納得できる説明をするのは当然の責務だ。日本が対外的に発する様々な主張の信頼と正当性にもかかわる》(同)

 基本方針を変更するのであれば、その理由を説明しなければならないのは当然のことである。が、<日本が対外的に発する様々な主張の信頼と正当性にもかかわる>などと大袈裟に言う必要はない。外交交渉は「時処位」(中江藤樹)を見極めることが大事であり、円転滑脱さこそが求められるものである。【続】