保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

日露首脳の領土交渉について(3)~「4島」か「2島」かより大事なもの~

《ロシアは4年前、自ら認めた国境を無視してウクライナクリミア半島を併合した。その国といま、平和条約を結べば、国際社会からどんな視線を受けるかも留意すべきだろう》(11月16日付朝日新聞社説)

これはその通りであって、ロシアを取り巻く環境にも十二分に配慮した上で交渉を進める必要がある。

《1855年の日露和親条約で国境線が択捉島と得撫(うるっぷ)島の間に定められて以降、四島が外国に帰属したことは一度もなかった…

 先の大戦末期に、日ソ中立条約を破って参戦したソ連が、北方四島を不法占拠した。プーチン氏のロシアが行ったクリミア併合と同じ「力による現状変更」にほかならない》(11月16日付産經新聞主張)

 そうなのだ。彼らは野蛮にも「力で奪い取ったもの勝ち」という考え方、すなわち「歴史は勝者によって作られる」という論理なのであるから、日本が本気で彼らから北方領土を取り戻したいのであれば、武力に訴えるしか道はないのである。

 それが嫌なら、クリミア問題における国際世論と歩調を合わせて「力による現状変更を許すな!」と大々的に情報戦に打って出るしかない。「北方領土は日本固有の領土です」などと日本国内でか細い声を挙げていても北方領土が還ってくることはない。

《共同宣言は、シベリアに不当に抑留されていた日本人の帰還や国連への加盟、漁業問題の解決という課題を抱えていた日本が、領土交渉の継続を約束させた上で署名したものだ。

 「人質」をとられてソ連と交渉した当時の厳しい状況を踏まえなくてはならない。苦肉の策で結んだ共同宣言を基礎に「2島返還」だけを目指すとすれば、ロシアの思うつぼである》(同)

 たとえ<思う壺>であったとしても、ただ「4島返還」を言い続けるだけでは2島すら還っては来ない。このように言えば、私が2島返還論者のように聞こえてしまうかもしれない。が、私は4島か2島かということに拘(こだわ)りはない。

 ただ、第2次世界大戦末期、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して満洲に攻め入り、日本がポツダム宣言を受諾した後も戦闘を止めず火事場泥棒よろしく千島に攻め込んで悪虐非道の限りを尽くし、果ては戦後、200万人とも言われる日本人をシベリアに抑留し、内40万人を死に至らしめた連中に対して非難の声を上げることもなく、戦後は平和憲法のおかげで平和でしたなどという「平和呆け日本」を嘆いているだけである。

 このように言えば、私が憲法を改正して力尽くで北方領土を取り返せとでも言いたいのかと非難されるのかもしれないけれども、私は、「時」と「処」と「位」によっては、力も使って取り返せるような体制を整備しておくことが大事だと思っているにすぎない。ドンパチせよと言っているのではない。「力」という後ろ盾がなければ外交交渉は奏功しないと言いたいだけである。

プーチン氏はきのう、歯舞、色丹2島の引き渡しについて「どちらの主権の下になるか(宣言には)記されていない」と述べた。主権は今後の交渉で決めるという姿勢だ。

 ロシア側は2島が日米安保条約に基づき米軍の軍事拠点となることへの懸念も繰り返し示している》(11月16日付毎日新聞社説)

 門前払いすることなくこのように言っているということは、ロシア民の反応を見ながら「落とし所」を探っているということのようにも思われる。

良いか悪いか、満足か不満かは別にして、「2島返還」ということなら話はまとまるのかもしれない。【了】