保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

TPP11年内発効について

《米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP)が12月30日に発効する。

 新たに生まれる自由経済圏は人口約5億人、国内総生産(GDP)の合計が世界の13%を占める。

 TPPを離脱した米国のトランプ政権が保護主義政策を押し進めて欧州の一部にも広がる中、自由貿易と多国間協調の重要な基軸となろう》(11月2日付京都新聞社説)

 日本が指導力を発揮し、このような大規模な協定を作り上げ、なんとか実施に漕ぎ着けたことは非常に意義のあることである。

《タイやインドネシア、韓国、台湾、コロンビアのほか、欧州連合(EU)を離脱する英国もTPP合流に関心を示している》(11月3日付産經新聞主張)

というから、経済活動における新たな世界標準づくりに今後も日本が積極的に取り組み、汗をかくことが望まれる。

《高水準の関税撤廃だけでなく、域内共通の先進的な通商ルールを定めた巨大経済圏の誕生を、日本経済の成長へと確実につなげたい》(同)

というのは表向きの話である。裏面では、

《日本が重視する多国間の連携で成果を積み重ねることは、2国間交渉で自国優位の協定をのませようとする米政権の保護主義的な動きに対抗するのに欠かせない。

 TPP11には、経済、軍事面で覇権志向が強い中国の国家資本主義の影響が域内で増すのを牽制(けんせい)するという本来の戦略性もある》(同)

という政治的、国家安全保障的な側面がこの協定にあることも忘れてはならない。が、果たして世間はこのことをどれだけ理解しているのだろうか。

《日本などは、アジアでもう一つの自由貿易圏をつくる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内大筋合意を目指して交渉している。

 中国やインドが入るためTPPより規模が大きく、米国への対抗力は強まる。日本は中国との関係改善も生かし、交渉をリードすべきだ》(11月1日付毎日新聞社説)

 TPP11によって中国を牽制しておきながら、RCEPによって中国と歩調を合わせる。これは矛盾以外の何物でもない。何も露骨に中国と敵対する必要はないが、せっかく中国を経済的、政治的に牽制する体制を築いておきながら、それを自ら無意味にするような話である。

 RCEPの話が出てくるということは、TPP11を経済的な側面でしか捉えていないということである。経済においてさえ中国とは同調できないところが少なくないように思われるが、米国が保護主義に傾いているため、友敵感覚が変調をきたしてしまっているのではないか。

 中国に対する遠慮や弱気がこのような曖昧さを生んでいるのだとすれば、やはり問題である。