《日本や中国、インドなど16カ国による自由貿易圏構想「東アジア地域包括的経済連携(RCEP=アールセップ)」の首脳会議は、目標としていた年内の交渉妥結を見送った》(11月7日付毎日新聞社説)
日本には「環太平洋連携協定」(TPP)がある。RCEPとTPPは重複であり同時に矛盾でもある。
TPPで中国を外し、RCEPで中国と連携する。一体日本は中国とどう付き合いたいのか。
RCEPから日本が外れれば、日本が東アジアにおいて「仲間外れ」となることを怖れてのことなのかもしれない。が、日本がそのような弱腰では東アジアが中国主導の中華圏と化してしまいかねない。
《深刻なのは、インドが離脱まで示唆したことである。
インドは中国から安い製品を大量輸入し、多額の貿易赤字を抱える。関税を下げれば、自国産業がさらに圧迫されると判断したようだ》(同)
経済の発展段階が異なる国々が一大経済圏を作ろうというのであるから、このような問題が生じることは避けられない。が、RCEPにインドが加わるか否かは大きな違いがある。
《RCEPは人口で世界の半分、国内総生産(GDP)で3割を占め、日本などが発効させた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を大きく上回る。人口13億人超の中国とインドが加わっているからだ。米国の保護主義への防波堤にもなる》(同)
話は米国の保護主義と中国の独裁主義の二者択一ではない。中国の独裁主義に与(くみ)する形で米国の保護主義を批判しても始まらない。日米が連携して中国の独裁主義を抑え込まなければならないのに、<米国の保護主義への防波堤>などという考え方を持ち出すのは非常に危険である。
《(RCEPが)実現すれば、貿易や投資が活発になり、域内の成長を押し上げると期待される。保護主義に傾く米国への牽制(けんせい)にもなろう》(11月6日付読売新聞社説)
米国の代弁者であったはずの読売新聞までがこのようなことを言うのはどうしてか。要注意である。
《日豪など11か国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)では、国有企業への不当な補助金の支給や、知的財産権の侵害に歯止めをかける規定が設けられた。
RCEPの詳細は公表されていない。ただ、中国に配慮し、TPPのような厳しい規定はないとみられる》(同)
RCEPが中国に<配慮>することは即ち中国のやり方を肯定することになってしまわないか。中国は<配慮>しなければならないような弱小国ではない。RCEPはすでにして中国主導ということの表れなのではないか。
《RCEPは13年に交渉が始まった。自由競争至上主義でもなく、門戸を閉ざす保護主義でもない、すべての参加国がそれぞれの事情と主体性を尊重され、公正に恩恵を受けられる―。そんな新たな経済連携モデルを東アジアから発信することが期待されている》(11月8日付京都新聞社説)
こんな夢物語を信じられるわけがない。夢を見ている小国が強国に呑み込まれていくのでなければよいが…