保守論客の独り言

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胡散臭い改憲論について(3)

安倍政権は、「集団的自衛権行使容認」を閣議決定した。これは、事実上の「解釈改憲」であった。安倍政権がこのような遣り方をとったのは、好意的に見れば、朝鮮半島有事が焦眉(しょうび)の急で、憲法改正する時間的余裕がなかったからだということだろう。が、それならそれで、後からたとえ時間が掛かろうとも憲法の条文自体を改正することが必要だったのではないか。その素振りさえ見せなかったのだから、反立憲行為と言わざるを得ない。

 憲法学の泰斗(たいと)長谷部恭男・東京大学教授は、「集団的自衛権行使を容認した昨年〔=2014年〕7月1日の閣議決定は、従来の政府見解との関係で論理的整合性も法的安定性も保っていない。集団的自衛権の行使は憲法9条に違反する」と言う。

《ご存じのとおり、あの閣議決定は、政府の憲法解釈には論理的整合性と法的安定性が求められる、したがって、従来の政府見解における憲法9条の解釈の基本的な論理の枠内にとどまる必要があると言っています。

 その基本的な論理とは、「外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて」武力の行使が許されるということです。

 しかし、もともと憲法9条の存在にもかかわらず個別的自衛権の行使だけが許されることの根拠であった1972年の政府見解の一部分をもってきて、個別的自衛権とは本質をまったく異にする集団的自衛権、要するに他国を防衛する権利の行使が許される根拠にするというのは、どう考えても変です。牽強附会(けんきょうふかい)と言わざるを得ない》(長谷部恭男・杉田敏編『安保法制の何が問題か』(岩波書店)、pp. 3-4)

【続】