保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

石破新首相の所信表明演説について(4)「絵に描いた餅」の羅列

《賃上げと人手不足緩和の好循環に向けて、一人一人の生産性を上げ、付加価値を上げ、所得を上げ、物価上昇を上回る賃金の増加を実現してまいります》

 具体的な施策なく、だたこのようなことを言っただけでは「空虚」でしかない。

《適切な価格転嫁と生産性向上支援により最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けます》

 市場原理に反し、政府が市場介入し、賃金引き上げに口を出すのは自由主義社会における「越権行為」である。が、このような発言は歴代内閣にもずっと見られ、日本が自由主義国なのかどうか自体が疑わしいという段階に来ているとも言えるだろう。

 また、国民に聞こえの良い「最低賃金引上げ」は、賃金を引き上げる体力のない中小企業の経営を逼迫(ひっぱく)させる。そのことは韓国の失敗からも明らかである。

《そのために、政府として、自由に働き方を選択しても不公平にならない職場づくりを目指した個人のリスキリングなど人への投資を強化し、事業者のデジタル環境整備も含め、将来の経済のパイを拡大する施策を集中的に強化します》

 日本型経済の特色は、組織力にある。が、〈自由な働き方〉だの〈リスキリング〉だのといった話は、問題を個の次元に矮小化し、雇用が不安定化して組織力の低下を招きかねない。このことは、小泉政権において雇用形態を破壊したことから一貫して続く、日本的企業文化に馴染まぬ愚策である。

《高付加価値のモノとサービスを、グローバル市場において、適正な価格で売ることのできる経済を実現します。輸出企業の競争力を強化し、中小企業を中心とする高付加価値化、労働分配率の向上、官民挙げての思い切った投資を実現します》

 単に言葉を羅列しているだけで、「どうやって」がなければ「絵に描いた餅」でしかない。

《AI時代の電力需要の激増も踏まえつつ、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を抜本的に高めるため、省エネルギーを徹底し、安全を大前提とした原子力発電の利活用、国内資源の探査と実用化と併せ、我が国が高い潜在力を持つ地熱など再生可能エネルギーの最適なエネルギーミックスを実現し、日本経済をエネルギー制約から守り抜きます》

 〈脱炭素〉に呪縛されている限り、〈エネルギー自給率を抜本的に高める〉ことなど不可能である。「抜本的」と言うのなら、小型原子炉の導入やメタンハイドレート、あるいは、水と二酸化炭素から作る「人口石油」の研究開発といったことにも踏み込むべきだろう。そのためには、既存の電力利権や、太陽光発電利権にメスを入れる必要がある。【続】