保守論客の独り言

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首相候補が見当たらない悲劇(3) ~高市前総務相の総裁出馬宣言~

突如伏兵が現れた。前総務相高市早苗衆院議員である。

《女性初の総務大臣衆議院議院運営委員長を歴任してきた自由民主党高市早苗衆議院議員が、810日発売の「文藝春秋」9月号に「総裁選出馬宣言」となる論文を寄稿した。政権構想となる「日本経済強靭化計画」の一部も披露している》(文春オンライン8/10() 6:12配信)

 保守系論者から歓迎の声が聞かれる。確かにそうだ。このまま菅義偉首相が継投となれば、日本の政治はより一層混迷の度を深めることになってしまうのではないかと危惧されるからである。

 他に名前が挙がっている候補よりはるかに好ましい、それは否定しないのだけれども、私には一抹の不安がある。高市女史に人心を掌握するための「カリスマ性」があるのかどうかということである。

 そんな高度な話を持ち出してはそれこそ誰も首相候補になれやしないという批判もあろうが、カリスマ性のない人が首相になってしまっては政権運営の纏まりが付かなくなってしまわないか心配である。

 高市女史は、

《「菅総理が力強い発信をできなくなっているのはなぜか。それは、自民党員や国民の皆様の十分な信任を受ける機会がなかったからだと思う」と指摘。昨年の総裁選は国会議員と都道府県連の代表各3人ずつによる簡易方式だったが、本来の「フルスペック」(投票権ある党員全員の投票による選挙)で総裁選をおこなうことの意義を強調する》(同)

 が、これは違う。菅氏にはそもそも力強く発信すべき中身がない。携帯料金の値下げが一番の政策に出て来るようでは論外である。

《「私は、国の究極の使命は、『国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと』『領土・領海・領空・資源を守り抜くこと』『国家の主権と名誉を守り抜くこと』だと考えている」

 そう基本軸を設定したうえで、大胆な「危機管理投資」と「成長投資」が必要だと指摘》(同)

 裏を返せば、こんな当たり前のことを確認しなければならないほど今の政治が混迷を極めているということである。本来、問われるべきは、「いかにして」(HOW)である。いかにして国民の生命と財産を守るのか、いかにして領土・領海・領空・資源を守るのか、いかにして国家の主権と名誉を守るのかという現実的手法が問われているのである。

 別言すれば、例えば、国民の生命と財産を守るために「何」(WHAT)をなすべきか、そして政策の「優先順位」(PIORITY)をどのように付けるのか、そのことが問われているのである。

《「『危機管理投資』とは、自然災害やサイバー犯罪、安全保障上の脅威など様々なリスクについて、『リスクの最小化』に資する研究開発の強化、人材育成などを行うことだ。

(中略)

『成長投資』とは、日本に強みのある技術分野をさらに強化し、新分野も含めて、研究成果の有効活用と国際競争力の強化に向けた戦略的支援を行うことだ」》(同)

 確かにそうなのだ。が、もっと具体的な話がなければ、政策を実行に移すことは出来ないし、実行部隊も揃わない。

《「今後、中国共産党が日本社会への浸透と工作を仕掛けてくる可能性もある。(中略)日本国内の企業や大学や研究機関の内部に設置された中国共産党組織が、先進技術や機微技術の流出拠点となる懸念も大きい」としたうえで、法制度整備と体制強化を提案している》(同)

 対シナ政策が最重要課題であることは論を俟たないが、今のような媚中派が政府与党内で実権を握っている状態で何を言おうが暖簾に腕押しにしかならないだろう。本気で親中派の横槍を排除するつもりなら、公明党との連携を絶ち、自民党を二つに割るということも必要となってくる。「言うは易く行うは難し」なのである。【了】