保守論客の独り言

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福島第1原発処理水の海洋放出について(3) ~小泉環境相の出番です~

《福島第1原発では、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための水や、原子炉建屋に流れ込む地下水などの汚染水が毎日100トン以上生じている。それを多核種除去設備「ALPS(アルプス)」などで浄化した処理水は、今までに125万トンたまっているという。

 処理水には、アルプスでも取り除けない放射性物質トリチウムが含まれている。それでも、薄めて海に流せば、科学的には安全だと政府は主張する。国内外の原発でもトリチウム水を海に放出しており、国際的にも認められている―というわけだ》(4月11日付中國新聞社説)

 <というわけだ>も何も、<国際的にも認められている>、それが事実である。が、

《福島で事故が起き、安全神話を広めてきた原子力関係者らの「うそ」が露呈した。それが骨身に染みた人には、「薄めれば科学的には安全」と専門家に強調されても疑念は消えまい。

 そもそも、トリチウム以外の放射性物質もアルプスで完全に除去されるわけではない。どんな放射性物質がどのくらい残るのか。人体への影響はどのぐらいか。きちんとデータを出して説明することが先だろう》(同)

 少し古い話になるが、2011年のこと、東京都内での記者会見の席上、低濃度だと証明するために飲んだらどうかとのフリーライターに言われ、内閣府園田康博政務官(当時)が処理水を実際に飲んで見せたことがあった。

記者会見で、浄化処理した福島第一原発放射能汚染水を飲む園田康博内閣府政務官=31日午後、東京都千代田区内幸町の東京電力本店、小川智撮影)(朝日新聞 DIGITAL 2011年10月31日19時9分)

 風評を一発で払拭できる秘策がある。それは、演出好きの小泉進次郎環境相が世界に向けてコップ一杯の処理水をおいしそうに飲みほすことである。

《手続きも不十分だ。放出について東電は「関係者の合意を得ながら行う」と明言していたはずだ。国も関係者の理解なしにいかなる処分も行わないと説明していた。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は放出に反対し、抗議声明を発表した。到底理解を得たとは言えない》(4月14日付琉球新報社説)

 東電がいい加減なのは指摘の通りであろう。

《東電への不信も根深い。汚染水から除去できるとしていた放射性物質が残留していたのに、積極的に説明していなかったことが18年に発覚。最近もテロ対策の不備や地震計故障問題があり、安全文化や企業体質に改めて疑問が持たれている。原発事故の賠償でも、被災者との和解を拒否する事例が相次いだ》(4月14日付朝日新聞社説)

 そもそも「関係者の合意を得ながら行う」などと東電が約束していたとすればそれこそが問題なのであって、政治的責任の負えない東電がこんな無責任な約束をすること自体許されない。

 が、逆に言えば、政治的責任の負えない東電の約束など無効でしかないことは分かり切ったことであって、今更こんな約束をぶり返したとて詮無きこととも言えるだろう。【続】