琉球社説は処理水を海洋放出せず地上で保管するよう主張する。
《トリチウム分離など放射性物質を取り除く技術が開発されるまで地上保管を選択すべきだ。
第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水が、建屋に流入する地下水などと混じり汚染水が発生する。東電は浄化した処理水を敷地内のタンクに保管している。来年秋以降、タンクの容量が満杯になるとみている。なぜ他に増設場所を確保する努力をしないのか》(4月14日付琉球新報社説)
これはこれで1つの見識ではある。が、現実的には、
《海洋放出は最善の策ではない。しかし、貯蔵タンクを無限に増やし続けるわけにはいかないというのも事実である》(4月14日付東京新聞社説)
《海に流す以外に、どうしても手だてがない、人体に影響は出ないと言うのなら、厳重な監視と情報公開の体制を整え、正確なデータをわかりやすく示し、漁業者や消費者、沿岸住民などの不信と不安を“除去”してからだ》(同)
御説御尤もである。
《関係閣僚会議で海洋放出が決まった場合でもトリチウムを海水で薄める希釈設備などの諸準備に1年以上は要するだろう》(4月11日付産經新聞主張)
ということなので、その間を利用して納得のいくようしっかり話し合うことである。
《風評被害が起きた場合、東電は適切に賠償に対応するとしている。だがたとえ賠償金が出ても、漁業を続けられず、後継者が育たないなら、被災地の復興はままならない》(4月14日付神戸新聞社説)
確かに福島の未来を考えると重苦しいのであるが、<被災地の復興>のために知恵を出し合い最善を尽くすしかない。
《処理水には技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれており、海水で十分に薄めた上で海に流すと説明している。しかし、濃度を下げたとしても、トリチウムの総量は莫大な量に上るはずだ。全量放出すれば海を汚染しないと断言できないだろう》(琉球社説、同)
が、世界には日本以上にトリチウムを排出している原発はたくさんある。
https://twitter.com/eiji_ebata/status/1381847485711319040/photo/1
今更これらの原発のトリチウム排出を止めるなどということは出来まい。だから、日本も排出したらよいということにはならないが、世界標準を下回る形で処理水を排出しようとしているのであるから、日本だけが非難される筋合いの話ではないことだけは確認しておくべきである。
琉球社説の発想は憲法9条に似ている。世界情勢を省みることなく、日本にだけ厳格な規制を設けて良しとするのは「欺瞞」(ぎまん)でしかない。9条もそうだが、世界を問い詰める勇気もなく、安全安心な日本の中だけで理想論を吐いて正義に酔いしれているようでは只の「偽善者」ではないか。【続】