保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

支離滅裂のレジ袋有料化(2) ~プラごみ削減の裏技~

《日本で年間に排出されるプラごみは900万トンを超えている。政府は昨年、2030年までに25%削減するという目標を立てたが、レジ袋はすべて削減できたとしても2%程度にすぎない。ペットボトルや弁当容器など、生活には使い捨てのプラスチック容器があふれている。

 海洋投棄されたプラごみは海洋生物が飲み込んだり、細かく砕かれてマイクロプラスチックとなり、有害物質を付着させて魚に蓄積したりといった問題も多発している》(7月1日付山陽新聞社説)

 2030年までにどうやってプラごみを25%も削減できるのか訝(いぶか)しく思われるかもしれない。そのからくりはこうだ。

《植物などを原料とし環境に優しいバイオ素材の国内利用は13年度の7万トンから約200万トンに拡大する》(「使い捨てプラごみ、25%削減 環境省素案 30年目標、植物素材を拡大:SankeiBiz 2018.10.15 05:59更新)

 つまり、ごみを減らすという話ではなく、プラスチック素材からバイオ素材に切り替えようということなのであって、「使い捨て文化」からの脱却などというような話ではない。環境省の意図を理解せず、

《今回、植物由来のバイオマスプラスチックや微生物が分解する生分解性のレジ袋は環境負荷が少ないとして義務対象からはずれた。制度の趣旨からすれば有料化を検討すべきではないか》(同、山陽社説)

などというのは的外れもいいところである。

《日本で処理されるプラごみの6割以上は、一般ごみと一緒か固形燃料の形にされて焼却処分される。発電などにも使われている。リサイクルされるのは4分の1程度だといわれる。しかも、その半分以上は海外に輸出して処理されてきた》(同)

 東京農工大学・高田秀重教授は言う。

《日本は、プラスチック廃棄物の多くを、リサイクルとして海外に輸出しています。その数は、年間およそ150万トンに及びます。リサイクル処理には手間がかかるため、その人件費を日本では捻出できないことから人件費の安い海外に輸出しているのが現状です》(「日本はプラスチック廃棄物の処理を海外に押し付けている」:HUFFPOST 2019年05月30日08時11分 JST

 律儀に分別しているのが馬鹿らしくなるが、それが実情である。

《しかし、主な輸出先であった中国が2018年、工業由来の廃プラスチックの輸入を停止しました。理由のひとつは、経済成長と共に中国国内のゴミも増えたので処理が追い付かなくなったこと。もうひとつは、環境汚染に繋がっていたことです。プラスチック廃棄物の多くは、食べ残しが付いていたり、実際には資源としてリサイクルしにくいものばかりなので、業者は不法投棄をしたり、有害物質を焼却したり、海に流出させていました。それによって深刻な環境問題が起きていました。これは中国に限らず、他の国でも起きています》(同)

 追い打ちを掛けるように

《有害廃棄物の国際的な移動を規制するバーゼル条約で、来年1月からは汚れたプラごみの輸出入ができなくなる》(同、山陽社説)

 この問題は、プラごみがバイオごみに取って代わればそれでよい話ではないはずだ。リサイクルの偽善にも切り込む必要がある。【了】